映画『ビリーバーズ』ネタバレなしの感想。カルト宗教段階の崩壊を描く

■評価：★★★☆☆3.5

「新興宗教団体の恐怖」

【映画】ビリーバーズのレビュー、批評、評価

『Blue』『ありがとう』『レッド』の漫画家・山本直樹の同名タイトルの実写映画版。
監督は『私の奴隷になりなさい』シリーズ、『アルプススタンドのはしの方』『女子高生に殺されたい』『愛なのに』の城定秀夫。

『ニコニコ人生センター』という宗教団体に所属している主人公の『オペレーター』は、他の仲間2人と共に『孤島のプログラム』と呼ばれる無人島での共同生活を行っていた。初めは満ち足りていた彼らの生活も、追い詰められて移住してくる『みんな』と共に崩壊へと向かっていく。

原作者の山本直樹の著作は、本作を始め、性を題材とした漫画が多い。
過去に山本直樹の著作である『BLUE』を読んだが、異様に生々しい描写で興奮させられたもの。
高校を舞台とし、『BLUE』という謎の薬を飲み合い、まぐわいに耽る男女の高校生を描いたストーリー。
過去には東京都により不健全図書に指定され、版元回収になっている。

『BLUE』を読んだ経緯は、漫画家・押見修造が影響を受けているという情報を目にしたため。
押見修造の著作『漂流ネットカフェ』『惡の華』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』『血の轍』が私はものすごく好み。
押見修造は純文学小説のように、人間の内面を生々しく描いている。
かつ、女性キャラをとても美しく描く。
そんな彼の創作の血肉となった作家に興味が湧いたのだ。

映画『ビリーバーズ』に話を戻すが、設定は面白かった。
カルト宗教にハマる３人が孤島で過ごす物語。
馬鹿げたニコニコの顔文字のTシャツを着ている彼らは、真剣に、教団の教えに従い、毎日、その日見た夢を包み隠さず暴露している。
もし、少しでも隠したり、あるいは教団のルールを破る行為があると、一定期間、土に埋められる罰が下される。
何で土に埋めるのかは謎なのだが、新興宗教らしい、一般人の感覚では理解に苦しむ感じが良い。

孤島で過ごすという設定も面白かった。
３人しかいないので、より、強固な信仰心が試されるシチュエーション。
３人は必死に信仰を守り、ルールを遵守する。
良く毎日毎日、教団に指示された日課をこなせるよなあ、と関心させられる。

そんな中で、３人の信仰心をぶっ壊すような、とある出来事が起こるのだ。
お堅いルールが次々と崩壊していく様に、カタルシスを覚えた。
一度壊れたら最後。
歯止めが利かなくなり、破滅に向かって突っ走るのみである。
誰でも、日課や自分ルールを破ったときの快感は経験している。
ダイエットで食事を我慢しているのに、「今日は体調が悪いから」とか、謎の理由をつけて、脂っこいものや甘い物に手を出したときはもう。
背徳的な気持ち良さは癖になる。

彼らは、生死に関わるようなもっと厳格なルールで縛られている。
そんなルールを壊していく姿は、観客も強い共感を覚え、気持ちよくなってしまう。
この見せ方は上手いなあと感心させられた。

ヒロインの北村優衣の体当たりっぷりも凄い。
中盤以降は脱ぎっぱなしである。
肉体自体は綺麗なので、自然豊かな孤島とのコントラストが美しくて絵になる。
男は彼女の体をべろべろと嘗め回しまくるし、もはや大人のDVDでも見ているかのようだった。
やっぱり女性キャラが魅力的だと、物語には引き込まれる。

余談だが、主人公が所属する教団の先生と呼ばれるトップの人間は、著者の山本直樹本人が演じている。
確かに大根演技だったのですぐに分かった。

クライマックスは意味がわからなかった。
主人公が何に葛藤を覚え、どんな成長を果たしたのか。
最後まで観ても、今イチしっくりは来なかった。
人の弱い心を生々しく描いているが、テーマは、私の足りないIQでは理解が及ばなかった。

あと、宗教団体がただただ悪として描かれる設定は、古くささを感じる。
本作の連作開始日は1999年なので当然ではある。

とはいえ、見所も多いので、映画ファンにはおすすめしたくなる。

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