■評価:★★★☆☆3
「内気な少年の成長」
【映画】ブラック・フォンのレビュー、批評、評価
『エミリー・ローズ』『地球が静止する日』『フッテージ』『NY心霊捜査官』『ドクター・ストレンジ』のスコット・デリクソン監督による2022年公開のホラー映画。
1978年。コロラド州デンバーのとある町では、“グラバー”と呼ばれる謎の犯人による、子どもの連続失踪事件が起きていた。そんなある日、内気な少年フィニーは小学校から帰る途中、マジシャンだという黒い風船を持った男に出会う。男はフィニーに「マジック見るかい?」と言ったかと思うと、突然彼を無理やり黒いバンに押し込んでしまった。気がつくと、フィニーは地下室に閉じ込められていた。その部屋は壁に囲まれ、鍵のかかった扉と鉄格子の窓、そして断線した黒電話があった。すると、その断線しているはずの黒電話のベルが突然鳴り響く。一方、フィニーの妹グウェンは、兄の失踪に関する不思議な予知夢を見たことから、その夢の記憶を頼りに必死に兄の行方を探し始める。
YOUTUBEで映画レビューを行っているミステリー小説家の七尾与史さんが、おすすめに挙げていたので鑑賞した。
上記以外で興味を持った大きな要因がある。
本作は、短編小説集『20世紀の幽霊たち』に収録された「黒電話」を原作とする実写版。
著者ジョー・ヒルがなんと、スティーヴン・キングの実の息子だそう。
スティーヴン・キングといえば、ホラー小説界の重鎮で、異様な数の代表作を持っている。
『キャリー』『シャイニング』『ザ・スタンド』『呪われた町 』『ミスト』『IT』『ミザリー』などがあり、多くの作品は映画も制作されている。
ホラー以外にもヒューマンドラマの名手で、映画となった『スタンド・バイ・ミー』『グリーンマイル 』『ショーシャンクの空に』の原作も、彼が手がけている。
そんな小説の才能に溢れた男の息子だから、どんな作品制作したのか興味を持って鑑賞するに至った。
『ブラック・フォン』は冒頭からぐいぐいと引き寄せられた。
主人公の少年が住む町では、最近、子どもが連続で失踪していた。
犯人は黒いバンに乗った謎のマジシャン。
残念ながら主人公も誘拐されてしまい、地下室に幽閉される。
果たして主人公は脱出できるのか?
といった内容の物語。
個人的に気になったのが、なぜ、犯人は主人公ら少年少女を誘拐するのか? である。
なぜなら、失踪した子供たちは遺体として見つかっているわけではない。
さらに、主人公を誘拐しても、犯人は、すぐに命を奪うような行動は見せない。
普通に食事は与えるし、何なら、主人公に危害を加える素振りは見せない。
犯人の挙動があまりに不可解なため、どんな目的で誘拐したのか、で頭がいっぱいの状態で鑑賞していた。
だが、全く描かれないので凄く気になる。
私がもしかしたら見逃したかもしれないが、犯人の動機は最後まで語られなかった。
そのため、鑑賞後も腑に落ちない物語の印象。
もし、実際に描かれていたのだとしても、物語の主題は動機ではない。
主人公の成長である。
なので、描かないのなら、観客の思考誘導をしてほしいなって思った。
動機がメインじゃないのなら、誘拐した直後に「お前、俺の動機を知りたいんだろう? 実は○○なんだ」といった具合に、べらべらと話して欲しかった。
あと、幽閉された地下室には、黒電話がある。
電話線が繋がっていないのに鳴る。
私が合わなかったと感じたのが、この箇所である。
この箇所の詳細を語るとネタバレになりそうなので伏せておくが、この黒電話の設定による成長物語、というのは私にはしっくり来なかった。
ネタバレなしの表現は難しくなってしまうが、主人公には、もっと生々しい痛みや苦労を経て、成長して欲しいなと思った。
あまりに展開が非現実的なので、個人的には腑に落ちない。
あと、妹が予知夢を見られる設定がある。
これはあまり活用し切れていない気がする。
もっと、細かい箇所で予知夢によるエピソードがあって良かった気がする。
あまりに使われなさすぎるのが違和感を覚えた。
予知夢じゃなくてもいいじゃん、といった感想。
結論として、個人的には普通だった。
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ブラック・フォンの作品情報
■監督:スコット・デリクソン
■出演者:メイソン・テムズ
マデリーン・マックグロウ
ジェレミー・デイヴィス
イーサン・ホーク
■Wikipedia:ブラック・フォン
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):83%
AUDIENCE SCORE(観客):88%
ブラック・フォンを見れる配信サイト
U-NEXT:○(有料)
Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)、○(字幕・有料)、○(Blu-ray)、原作はこちら
Netflix:-
※2022年12月現在