映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

ノンフィクション本『「カルト宗教」取材したらこうだった』ネタバレなしの感想。体当たりで取材を挑み続けた著者のカルト集団との交流と暗闘記

■評価:★★★☆☆3.5 

 

「カルト宗教は面白い」



【h2】【ノンフィクション本】「カルト宗教」取材したらこうだったのレビュー、批評、評価

 

カルト集団、宗教、スピリチュアル産業を取り上げるニュースサイト「やや日刊カルト新聞(Almost Daily Cult News)」を創刊し運営する藤倉 善郎によるノンフィクションのルポ本。

dailycult.blogspot.com

 

ミイラ事件で有名になった「ライフスペース」の記事でクレームを受けた著者は、それ以来15年間にわたりカルト問題を取材し続けてきた。セ●クス教団の5泊6日の合宿に参加、宗教団体が主催する偽装就職セミナーへの潜入取材、教祖様の実家探訪...。まったく関係ない人間から見れば、奇妙奇天烈としか言いようがない彼らの実態とは何なのか。体当たりで取材を挑み続けた著者が綴る、カルト集団との交流(笑)&暗闘記。

 

私の個人的なことで恐縮だが、現在、カルト宗教団体が絡む物語の小説を執筆している。
私はカルト宗教には無知だし、入信もしていない。
資料集めをする必要があり、まずは、カルト宗教を題材とした小説を探した。

例えば、すでに読了済みで、復習のために再度、読み直しをしている中島らも著『ガダラの豚』。
※アル中の大学教授が、カルト宗教にハマってしまった奥さんを救出に奮闘する物語。
とにかく無茶苦茶面白いので、普段、小説を読まない人にすすめたい。
「小説ってこんなに面白い作品があるのか」と思わせられる自信のある最高のエンタメ。

以前、記事にも上げた『慟哭』もそう。
連続幼児誘拐事件を追う刑事と、宗教にハマっていく男の2人の視点から描く叙述トリックを用いられたミステリ-小説。

ほとんどの小説には、最後のページに参考にした資料の一覧が載っている。

上記の本に載っていたいくつかのカルト宗教の関連本と併せて、体験記(ルポタージュ)となる本作『「カルト宗教」取材したらこうだった 』を資料として拝読した。
かなり興味深い内容だったので、記事を作った。

タイトルの通り、フリーのジャーナリストである藤倉善郎が、いくつかの実際に存在するカルト宗教に体当たりで入信した際の体験記がメインとなる。
このコンセプトからして興味を持つ人は多いのではないだろうか。

まず、最初に筆者が入信したのは「ラエリアン・ムーブメント」という宗教団体。
東北の観光ホテルで実施される5泊6日の合宿に、飛び入りで参加する。
この団体はなんと、セ●クス教団である。
このワードから興味を惹かれる人は多いのではないだろうか。
少なくとも私はその一人。

合宿について、すべてを話すとネタバレになるので、一部だけ記述したい。
この教団の教祖ラエルは、合宿初日の講演で、とにかく人生は変化を楽しむことが重要だと述べている。
パートナーを変えれば、たくさんの異性と交わることを楽しめる。
この合宿のテーマは遊ぶこと。
とても偉いローマ法王だって、「法王を作ってやろうか」といった具合に両親はマジメに交わったわけではない。
遊ぶように交わり、ローマ法王は誕生した。
つまり、余計なことを考えたらアウト。
合宿でも、変化を楽しむことが重要なのだ。

といった内容を聞きつつ、初日から二日目までは断食させられる。
まだ性にまつわることも禁止。

二日目の断食から解放され、食事が与えられる。
食事の内容は、イメージするだけで胃が持たれそうなメニューだった。

食事後は、いよいよお楽しみの自由時間となる。
宴会などを行えるフロアでは、ダンスパーティが実施されている。
何とも刺激的な姿で踊る若い女子たちもいる。

教団は、ホテル一つを丸ごと貸し切っている。
そのため、カラオケ場などがプレイルームとして活用できるようになっている。

この自由時間でどんなことが起きるのだろうか。
果たして、著者はパートナーをゲットすることができるのか。
直接、本作を読んで確かめて欲しい。
いやー、実に興味深い内容だった。
筆者が達した結論には、ちょっと笑えてしまった。

本作は、「ラエリアン・ムーブメント」以外にも、いろんな取材記録が載っている。
例えば、記事を作るために取材していたカルト宗教団体からクレームが入ったり。
あるいは、別の団体から著作権法違反で警察に通報され、家宅捜索を受けた経験談など。

作者はカルト宗教にまつわる、普通に生きていたらまず体験できない稀有な経験を多くしていて、あますことなく記録に残してくれている。
どれも面白い内容で満足度は高い。

一番楽しめた記事は、やっぱり「ラエリアン・ムーブメント」の体験記。
本著のごく一部であるが、この体験記を読むだけでも十分に価値のある一作だと、個人的には思っている。

 

カルト宗教を題材とするおすすめ作品はコチラ。

■慟哭

movies-ocean.hatenadiary.com

 

「カルト宗教」取材したらこうだったの作品情報

■著者:藤倉善郎
Wikipedia藤倉善郎
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