映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『ダウンサイズ』ネタバレなしの感想。科学技術により14分の1になった男を描く

■評価:★★★☆☆3.5 

 

「人が14分の1サイズになった際に受ける生活の影響」



【映画】ダウンサイズのレビュー、批評、評価

アバウト・シュミット』『サイドウェイ』『ファミリー・ツリー』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のアレクサンダー・ペイン監督による2018年公開のSFコメディ映画。

 

人間の身体のサイズを14分の1にする技術が発明される。そして、社会の諸問題の解決を助ける「人類縮小計画」がスタート。ある夫妻は生活コスト面でのメリットに魅かれ、13cmの身体になることに決める。

 


人間を科学技術で小型化できる世界を描く。
てっきり、小型化を生かした笑い全振りの映画かと思った。
例えば、主人公とその仲間たちが、小型になったことで、気になる女子の家に侵入しようとしたり。
あるいは小型になることで、できる仕事をこなしたりなど。
小型化することのメリットやデメリット、またその影響をコメディタッチで描いた作品だと思って鑑賞した。

小型化といったら、我々日本人が真っ先に連想するのはドラえもんのスモール・ライト。
子供の頃、誰もがスモール・ライトがあったらこんなことができる、といった妄想にふけっただろう。

本作はコメディ要素がありつつも、意外と社会派なテーマを取り扱っている。
例えば、14分の1の小型化ができるということは、食料の消費量も同じく少なくできる。
国民にとっては、資産も単純計算で14倍になるということなので、小型になるだけ大金持ちの仲間入り。
まさに主人公の夫婦は、豊かな暮らしを得るために小型の道を選択するのだ。
真剣に小型化したらどんな社会になるのか? を描いているので、ついつい、自分自身に置き換えて、どんな生活になるのかを妄想してしまった。

小型化になるための流れも面白かった。
例えば、小型化する人は銀歯を取り除くのだ。
なぜなら、銀歯までは小型にならないので、施術の際に頭が爆発して命を落としてしまう。
こういう細かい描写も多かったので、かなり楽しい映画体験になった。
やはりSFは、ぶっ飛んだ大きな嘘を、このようなディティールに拘って信じさせてくれるのが楽しい。

しかし、本作を見ていてネガティブな影響もたくさんイメージした。
小型化のデメリットについて、本作ではあまり多くは語られなかったのは気になる。
例えば、小型になると、通常サイズの人間より貧弱になるということ。
いざとなったら、一握りで潰されてしまう。
金持ちになる反面、普通サイズの人間と比較すると、圧倒的な弱者に陥るというのは、とんでもないデメリット。

また、小人専用の街に主人公らは住むことになる。
たまに用があって通常の街に出向いたとき、猫とか犬とかはすべて巨大である。
小型化になるということは、生命として弱体化することを意味する。

あと、商品も小型族は少ないだろう。
服とか食べ物など、マイノリティである小型族に最適化されたものは、普通サイズの人間に比べて選択肢が減る。
あとは遊びも。
私の大好きなTVはできなくなるから、娯楽面も困らせられる。
需要があればユニクロ小型族ラインも作成されるのかなあ、なんて思ってしまった。

本作には突き抜ける面白さがなかった。
一番の理由は、小型族と通常の人間の交流がほとんど描かれない。
そのため、どういった便利さや不便さ、生活する上での違いなどが描かれないので、もったいなさ過ぎる。
もっともっと、この題材は面白く生かせたと思う。
発想は楽しいので、もう一度、誰かに作り直してもらいたいところ。

 

■SF作品のおすすめはこちら

ダーウィン事変

movies-ocean.hatenadiary.com

ダウンサイズの作品情報

■監督:アレクサンダー・ペイン
■出演者:マット・デイモン
クリストフ・ヴァルツ
ホン・チャウ
クリステン・ウィグ
ウド・キア
Wikipediaダウンサイズ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):47%
AUDIENCE SCORE(観客):23%

 

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※2022年11月現在