映画『キングダム2 遥かなる大地へ』ネタバレなしの感想。古代中国の戦国時代『春秋戦国時代末期』を描く

■評価：★★★☆☆3.5

「中国の歴史の面白さ」

【映画】キングダム2 遥かなる大地へのレビュー、批評、評価

原泰久による漫画『キングダム』を原作とする実写映画の２作目。
監督は、『アイアムアヒーロー』『いぬやしき』『今際の国のアリスシリーズ』の佐藤信介。

隣国の魏が国境を越え秦への侵攻を開始。秦軍は決戦の地・蛇甘平原で迎えうつ。天下の大将軍を夢見る戦災孤児の若者・信は、歩兵として初陣に臨むため戦場へと向かう。

古代中国の戦国時代『春秋戦国時代末期』を描いた原作漫画を実写化した映画の２作目。
春秋戦国時代は紀元前770年から紀元前221年に秦が中国を統一するまでの時代を指す。
秦の始皇帝、という言葉を学生時代に歴史で学んで記憶している人も多いと思われる。
『キングダム』は秦国の大王・嬴政（えいせい）が始皇帝になるまでを描く大河漫画となる。

映画に話を戻すが、個人的に１作目はものすごく面白かった。
弟に王宮を奪われた秦王・嬴政とともに、奪還作戦を試みる内容。
個性溢れる敵が頻出するお陰で、ユーモラスな戦闘がたくさん見られるのが楽しかった。
スピード感溢れる展開で、ラスボスとの一騎打ちも見応え抜群。
ラスボスとなる男を、アクション俳優の坂口拓が演じている。
坂口拓は、アクションを追及するあまり、普通の格闘技ではなく、軍が用いる人の命を奪う技術を習得していたりとクレイジーな男。
説得力がある配役だし、主人公とのバトルは緊迫感が凄まじくて、最高だった。

対して本作だが、結論から言うと、そこそこ楽しめた。
そもそもキングダムは、七つの国に別れた古代中国で、主人公・信は秦という国の王の嬴政と共に、中華統一を果たす物語。
※厳密には、信の夢は大将軍になること。
１作目のプロットは、嬴政の弟である成蟜（せいきょう）に玉座を乗っ取られ、奪還を図る物語。
１作目とは異なり、本作は、いよいよ『キングダム』のメインとなる隣国・魏との戦争が描かれる。

ストーリーがシンプルなのが良かった。
冒頭数十分程度で、魏が、秦に攻めてくるシーンが描かれる。
主人公の信は、以前の王座奪還で嬴政の助けにはなったが、農民育ちで身分の低い。
そのため、歩兵として今回の戦争に参加することになる。
本作のほとんどは戦場シーンとなる。
複雑なプロットもないので、誰が見ても楽しめる作りになっている。

秦では、歩兵は、伍という５人一組のチームを組んで戦う戦略を取る。
そのため、信も初めて顔合わせした関係性な希薄な連中と組む。
最初はバラバラだったチームメイト。
だが、戦場での命懸けの戦いの中で、みんなの距離が縮まっていく。

王道の流れだが、まるでちょっとでも足を踏み外したら命を落としてしまう緊迫感の連続。
そんな中で命を預け合って助け合い、死線を潜り抜けるのだから、仲良くなって当然である。
映像の迫力があり、戦場シーンは見応えがあるので、距離が縮まるのは説得力抜群。

特に本作のヒロインとなる伝説の暗殺者一族の一氏族の蚩尤（きょうかい）は、寡黙だが無茶苦茶強い。
仲間なんて無関心だったが、信と共に戦場を戦い抜き、友情が芽生えていく。
蚩尤は暗い過去を持っているので、少しずつ表情が柔らかくなっていく姿、心に染みるものがある。

キャラクターでいうなら王騎が素晴らしかった。
原作では人気NO１の秦国の将軍。
本作では大沢たかおが演じているのだが、雰囲気はイメージした通りである。
あまりにイメージにぴったりすぎて笑えるレベル。
とはいえ、今回の戦争での秦国の大将は麃公（ひょうこう）。
麃公の戦いもダイナミックで見応えはあった。
だが、途中でふらっとやってきた王騎の存在感が素晴らしいので、できるなら王騎の戦いも見たかったところ。
すでにパート３は公開予定なので、次に期待。

微妙なキャラもいて、若干、漫画の実写化っぽいコスプレ感はいなめない。
例えば、敵将の呉慶（ごけい）は、漫画のまま、派手なメイクをしている。
劇中では、メイクをしているのは呉慶だけで、やたら浮いているのが気になった。

総合的に、面白さは１ほどではなかった。
１があまりに完成度が高かったし、１本の映画としてまとまりもあり、良く出来ていた。
２は絶対に１を超えられないだろうと予想していたし、結果は、想像通り１には到底及ばなかった。
とはいえ、キングダムの世界が実写で見られる面白さは担保されていたので、そこそこ満足できた。

前作を知らなくても本作だけ見て楽しめる。
だが、深いところまで楽しむなら１から見ることをおすすめする。

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