■評価:★★★☆☆3
「近親相姦」
【映画】私の男のレビュー、批評、評価
桜庭一樹による第138回直木賞受賞作の同名小説を原作とする、2014年公開のドラマ映画。
奥尻島を襲った津波で家族を失い、10歳で孤児となった少女・花。そんな彼女を、遠縁だという男・淳悟が引き取ることになる。2人は、雪と流氷に閉ざされた北海道紋別の田舎町でひっそりと暮らし始める。6年後、町の有力者で好々爺の大塩がふたりを別れさせようと花を説得する。
小説が原作が物語なだけあって、感情の機微をじっくりと描いた大人向けのドラマ映画。
エンタメ小説の最高峰である直木賞受賞作が原作だが、物語の重苦しい温度感は、むしろ純文学寄りな印象だった。
起伏の少ない地味な物語ではあるが、個人的には興味深く鑑賞できた。
とくに素晴らしいと思ったのが、舞台。
主人公の独り身である男・淳悟が、遠い親戚だということで、大地震による津波の被害で、家族を失った少女・花を引き取る。
お互い、社会からは孤立した存在。
やがて少女は成長し、高校生になる。
支え合って生きてきた二人は、近親相姦という禁断の恋に溺れる。
孤独を必死に暖め合う二人の姿を、真っ白の白銀世界で描かれるのが、何とも印象的だった。
北海道の田舎町で孤独になってしまったら、近親相姦になったとしても仕方ない、と思ってしまうような寒々しい映像。
寒さは身体的にも精神的にも厳しいもの。
実際に、日照時間の少ない北国では、鬱病率が高い、なんて話も聞く。
そのため、ついつい二人が幸せになることを応援してしまう。
話を戻す。
中盤以降は、物語の舞台が東京に移る。
東京に移ってからは、どうも面白味に欠けてしまった。
いくら、田舎よりもドライな国民性とはいえ、人が多い東京の街では、二人の孤独感や乾いた空気感が、画面越しからはあまりに伝わってこなかった。
東京に行ってからの、淳悟の言動も、納得できないものがある。
なぜ、あんな状態になっているのだろうか。
今イチ、淳悟の状態が理解できず、まるで妄想の物語でも見せられているのかと、当初は思ってしまった。
東京での、花の行動も理解不明である。
特に最後。
最後のレストランでのシーン。
花は淳悟に対して、どういう感情を持っているのだろうか。
興味深い物語ではあったが、尻つぼみな印象だった。
■閉塞的な田舎が舞台の関連作品はこちら
偽りなき者
私の男の作品情報
■監督:熊切和嘉
■出演者:浅野忠信
二階堂ふみ
山田望叶
モロ師岡
高良健吾
藤竜也
■Wikipedia:私の男
私の男を見れる配信サイト
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※2022年8月現在