映画『シン・ウルトラマン』ネタバレなしの感想。ウルトラマンを現在の時代に置き換えたリブート作品

■評価：★★★☆☆3.5

「現代にリブートされた特撮」

【映画】シン・ウルトラマンのレビュー、批評、評価

『ローレライ』『日本沈没』の樋口真嗣監督による2022年公開の特撮アクション映画。
脚本は『エヴァンゲリオンシリーズ』『シン・ゴジラ』『シン・仮面ライダー』の庵野秀明。

【あらすじ】科学特捜隊のハヤタ隊員は、パトロールの際にM78星雲人・ウルトラマンと衝突したのが原因で瀕死状態に陥ってしまう。そんなハヤタを見たウルトラマンは、彼と命を共有。一つになった彼らは、やがて地球の平和を守るために共に戦うことを決意する。

本作は東宝・カラー・円谷プロダクション・東映の4社が合同で立ち上げたプロジェクト『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』の一作。
『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』は、『エヴァンゲリオンシリーズ』の庵野秀明が、監督や脚本などで参加したシンの冠を持つ作品群に当たる。
２０２３年５月現在で、すでに発表されている作品は『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『シン・仮面ライダー』。

本作『シン・ウルトラマン』はまったく期待できなかった。
私を含む、多くの人が落胆した、実写版『進撃の巨人』の樋口真嗣が本作の監督を務めているためである。

ただ、庵野秀明が絡んでいるのと、アマプラで配信されていたのも相俟って、何となく鑑賞した。

そしたら思いの外、楽しい内容だった。
第一印象は思ったより庵野感が強かった。

ある日から、巨大なモンスターが頻出し始めた日本が舞台。
政府はモンスターの出現を災害とみなし、モンスターを「禍威獣（カイジュウ）と名付け、防災庁・禍威獣特設対策室（略称：禍特対（カトクタイ））を設立する。
この流れは、まさに庵野秀明が監督を務めた『シン・ゴジラ』と同じ流れである。
『シン・ゴジラ』ではゴジラが現れたことで、巨大不明生物特設災害対策本部」（巨災対）を官邸内に設置していた。
『シン・ゴジラ』は個人的にかなり好きだったので、既視感はありつつも、樋口真嗣感が薄いことへの安堵に繋がった。

更に『シン・ゴジラ』は、役者に演技をさせない感じも良かった。
『シン・ゴジラ』に出てくるキャラに個性はなく、ただ、状況説明やストーリーの進行のためにセリフを吐くマシーン状態だった。
とにかく長文のセリフを早口で吐かせる演出は、キャラの没個性化を捗らせている。
キャラ立ちしてないという物語は、本来、面白味に欠けるもの。
だが、あえてキャラ性を剥奪するからこそ、ゴジラの存在感が際立ったので、結果的には奇妙なバランスで面白おかしく楽しめた。

本作『シン・ウルトラマン』も庵野が脚本をやっているだけあって、やけに口語体ではなく、文語体の小難しい早口のセリフの応酬まみれ。
そのため、苦手な人も多いとは思う。
個人的には、庵野らしさを噛み締められた。
何だか頭の良いことをやっている中二病感もあって好み。

とはいえ、監督は庵野ではないので、各々キャラクター性は帯びていた。
例えば、長澤まさみ扮する浅見弘子。
浅見は、公安から来たエリート。
忙しい時は風呂に入らない仕事熱心な女性。
この臭みを放っていそうなイメージが、伏線となって後半に回収されるコミカルな流れが良かった。

他にも、やたらと私物を職場に持ち込むオタクキャラや、寡黙な主人公など。
印象的なキャラクターが多数登場するのは、見やすくて良いと思う。

意外とコメディな印象なのも好印象だった。
『シン・ゴジラ』は笑い要素がほとんどないシリアス一辺倒な映画だった。
一方で、本作は全体的にポップで若干、緩い空気感がある。
やっぱり巨人であるウルトラマンという、フィクション全開のヒーローを主軸としているからだろうか。

微妙だと思う箇所もあり、全編を覆う文語体のセリフに、たまについていけない箇所がある。
文語体のセリフ自体、嫌いではないんだけど、今、何をやっているのかの現状の把握が難しい。
もう少し、「つまりはこういう●●ということか」みたいに説明してくれるキャラがいたりして、観客に分かりやすく表現してくれるシーンをもう少し欲しかった。

あと、ウルトラマンの挙動がどこかロボット感が強いのも気になった。
もっと生き物のようにぬるぬると動いて欲しい。
だが、必殺技を放つときとか、空を飛ぶときの挙動がカクカクしていて、違和感を覚えてしまい、映画から意識が離れてしまった。

全体的には好みの作品。

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