映画『NOPE／ノープ』ネタバレなしの感想。謎の飛行物体を撮影し金儲けを目論む一家を描く

■評価：★★★☆☆3

「未確認飛行物体の恐さ」

【映画】NOPE／ノープのレビュー、批評、評価

『ゲット・アウト』『アス』のジョーダン・ピール監督による2022年8月26日公開のホラー映画。

【あらすじ】田舎町の牧場に空から異物が降り注ぎ、牧場経営する一家の父が息絶える。現場にいた長男は、謎の飛行物体を目撃していた。やがて、妹と共に動画撮影を試みた彼は、想像を絶する事態に見舞われる。

ジョーダン・ピールは、オリジナリティに富んだ独創的な設定のスリラー・ホラー映画を得意をする印象が強い。
例えば、私が彼が手がけた作品で最も好きな『ゲット・アウト』は、白人の彼女を持つ黒人男性が主人公。
まったくもって黒人には差別意識がないと申告する彼女。
ある日、彼女の家に遊びに行くと、見事な豪邸に仕える使用人が全員、黒人だった。
更に、親族だけを集めたパーティが開かれる。
集まったのは全員白人なのだが、みんなが主人公に強い興味を示す。
明かに、黒人に対して何かしら特別な意識を持つ家族らの元で過ごすことになる。
異様な雰囲気が漂っていて、緊迫感がたまらない。
ちなみにジョーダン・ピールは黒人監督のため、黒人をテーマに絡めることが多い。

次作の『アス』もユーモラスな設定だった。
裕福な黒人一家の前に、突如として家族と同じ風貌の人間らが現れる。
まさにドッペルゲンガー。
『アス』は展開がぶっ飛びすぎていて、個人的にはあまり好みではなかった。
だが、設定や導入自体は魅力的で、一気に物語りに引き込まれた覚えがある。

そのため、『NOPE／ノープ』はかなり期待して鑑賞した。
期待通り、導入は最高だった。
一家の住む空に、なぜか微動だにしない雲の存在に気付いた主人公。
雲の裏には、人間が作ったとは思えない奇妙な飛行物体が姿を見せる。
一家は金儲けのため、写真や動画撮影を試みる、といった流れ。

確かに入りは面白いし、中盤の飛行物体との本格的な対立は見応えがあって良かった。
だが、終盤が、あまりにぶっ飛びすぎてて、正直、微妙だった。
一言でいうなら、急にB級映画感が強くなった印象。
もちろん謎の飛行物体が出てくる時点で、チープな設定ではある。
だが、終盤は、あまりに展開が飛躍していて何がどうなっているのか分からない。
そのせいで恐さが伝わってこず、ちんぷんかんぷんのまま、終わりを迎えた。
感情の揺らぎ方が良くわからなかったので、楽しみづらかった。

他の気になる点は、重要な人物として出てきた男リッキーの存在が意味不明だった。
小さい頃に子役と働いていた現場で、出演していたチンパンジーが目の前で役者達に暴行を働く、ショッキングな瞬間に立ち会っている。
いかにも重要人物であるかのように、リッキーは丁寧に描かれていた。
何なら本作の冒頭はリッキーのエピソードから始まる。
だが、このトラウマのような経験が、本作にどういった繋がりを持っているのか今イチ理解に苦しんだ。
一体、チンパンジーと今回のＵＦＯは何の関係があるのだろうか。

本作はちょっとしたドンデン返しがある。
天地がひっくり返るほど大胆なものではない、軽度のビックリを与えてくれる。
それは良いんだが、せめて、リッキーの体験がどんでん返しと何かしらの関連性があって欲しい。
実際にはあるのかもしれないが、私のIQが低いせいか良くわからない。

とはいえ、嫌いな内容ではない。
何となく、フェイクドキュメンタリーのホラー映画を多く撮る白石晃士と同じ匂いを感じる。

白石晃士もありえないほどにぶっ飛んだ展開を見せるB級映画を多く作るんだが、嫌いじゃない。
（代表作は『ノロイ』『口裂け女』『戦慄怪奇ファイルコワすぎ!』『カルト』『ある優しき殺人者の記録』『貞子vs伽椰子』）
あと、ジョーダン・ピールはコメディアン出身なので、本格的な金の掛かったエンタメ映画よりも、こじんまりした作品のほうが得意なのではないだろうか。
コメディは大胆な映像的な迫力よりも、ちょっとした仕掛けの連続で楽しませてくれる印象がある。
ジョーダン・ピールには今後、規模の小さい作品を手がけて貰いたい。

『アス』もそうだが、意外と都市伝説やオカルトが好きな人なんだなと思った。

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■アンテベラム

movies-ocean.hatenadiary.com

NOPE／ノープの作品情報

■監督：ジョーダン・ピール
■出演者：ダニエル・カルーヤ
キキ・パーマー
スティーヴン・ユァン
■Wikipedia：NOPE/ノープ（ネタバレあり）
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家)：83%
AUDIENCE SCORE(観客)：69%