映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

画『ベイビー・ブローカー』ネタバレなしの感想。乳児の人身売買に手を染める男を描く

■評価:★★★☆☆3

 

「家族」



【映画】ベイビー・ブローカーのレビュー、批評、評価

 

『誰も知らない』『そして父になる』『海街diary』『三度目の殺人』『万引き家族』『怪物』の是枝裕和監督初の韓国制作の2022年6月24日公開のドラマ映画。

 

【あらすじ】古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨンが〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジンと後輩のイ刑事は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。

 


是枝裕和は家族をテーマとした作品を多く手がけている。
というか、一生、家族をテーマとして描き続けるんだろうな、といった印象。

カンヌ国際映画際で最高賞であるパルムドールを受賞した『万引き家族』は、疑似家族の物語。
給料や年金や万引きで、血の繋がらない連中がボロ家で生活をする。
福山雅治主演の『そして父になる』は、出生時に看護師によって子どもの取り違えに気づき、6歳になる自分の子供が、他人の子供であることを知った夫婦の物語。

個人的に私は、家族への思い入れのある人は多いので、是枝裕和は好みな作品が多い。

本作は今までの作品とは異なり、日本映画ではなく、韓国資本と韓国映画となっている。
JSA』『殺人の追憶』『パラサイト 半地下の家族』のソン・ガンホが主演なので、かなり期待して鑑賞した。

ソン・ガンホは冴えない中年男を演じたら右に出るものはいない、無茶苦茶、雰囲気のある俳優。
日本の俳優でいうと、若干、シリアスな作品に多く出るムロツヨシといった印象。

本作を鑑賞して思ったのが、やっぱりソン・ガンホは名優である。
本作でも何ともいえない味のある哀愁をギンギンに醸している。
クリーニング店を営みつつ、借金返済のために、児童売買に手を染めるベイビー・ブローカー。

犯罪者にも関わらず、まるで悪人には見えない。
仲間には優しいし、盗んだ赤ん坊のウソンの世話もちゃんとしてあげる。
やたらと、ソン・ガンホがウソンを抱っこしているシーンが映るのだが、堂に入る様で何だか面白かった。
実父にしか見えないのだ。

本作に出てくる登場人物は、全員が家族という存在に何かしらの思い入れがある。
ソン・ガンホ扮するサンヒョンは離婚歴があり、娘がいる。
また、サンヒョンのパートナーのドンスも児童施設出身で、何やらブローカー仕事をする行為に特別な意味を抱いている様子。
赤ん坊のウソンを一時的には捨てた母親のソヨン(ソナ)も同じく、家族絡みの秘密を抱えている。
家族という題材を、魅力的なキャラクターたちを通じてたっぷり描かれる。

だが、本作はあまり刺さらなかった。

設定は面白い。
違法の児童売買を行う主人公なんて、今まで見たことがなかった。
だから、ワクワクして鑑賞に至った。

だが、想定内、あるい驚きのない展開の連続で、見ていて予想ができる。
終わり方も普通だった。

主人公らはウソンを売る旅に出るのがメイン・ストーリーとなる。
だが、刑事がこっそりと、彼らを追い掛ける。
大きく分けて主人公と刑事の2つの視点で描かれる。

となると、何となく結末は見えてしまう。
もう少し、捻りをきかせて欲しい。
まるでラストの予想ができなくなる、ぶっ飛んだ展開が欲しかった。
前作の『万引き家族』は頭をぶん殴られるような衝撃展開を見せてくれて、画面から目が離せなかったくらい。

あとは起伏に乏しいのも気になる。
もっと、主人公らに大きなトラブルを発生させ、乗り越え、一気に距離が縮まるような変化を描いて欲しかった。
エンタメ的な作りではあるが、後半のカタルシスにも直結してくれる。
本作はそんなに大きなトラブルもなく、淡々と旅を進めている印象。
旅ができなくなるような事件でも発生させてほしい。

本作を制作した意味が今イチ掴めなかった。

 

 

親子を題材とした作品のおすすめはコチラ。

■ドリームプラン

movies-ocean.hatenadiary.com

 

■RUN/ラン

movies-ocean.hatenadiary.com

 

■ハッチング 孵化

movies-ocean.hatenadiary.com

 

ベイビー・ブローカーの作品情報

■監督:是枝裕和
■出演者:ソン・ガンホ
カン・ドンウォン
ペ・ドゥナ
イ・ジウン
イ・ジュヨン
Wikipedia:ベイビー・ブローカー
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):94%
AUDIENCE SCORE(観客):87%

 

ベイビー・ブローカーを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)○(Blu-ray)
Netflix:-
※2023年6月現在