映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『RUN/ラン』ネタバレなしの感想。過剰な愛を注ぐ母と対立する少女を描く

■評価:★★★☆☆3.5 

 

毒親からの自立」



【映画】RUN/ランのレビュー、批評、評価

 

「search サーチ」シリーズのアニーシュ・チャガンティ監督による2021年6月18日公開のスリラー映画。

 

【あらすじ】郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつき慢性の病気を患い、車椅子生活を余儀なくされている。しかし常に前向きで好奇心旺盛な彼女は、地元の大学進学を望み自立しようとしていた。そんなある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑のカプセル。クロエの懸命の調査により、それは決して人間が服用してはならない薬だった。なぜ最愛の娘に嘘をつき、危険な薬を飲ませるのか。そこには恐ろしい真実が隠されていた。ついにクロエは母親から逃れようと脱出を試みるが……。

 


本作はかなりマイナーな映画だが、鑑賞するきっかけになったのは、『search/サーチ』の監督・製作チームの最新作だから。
18年に公開された『search/サーチ』は数年前に鑑賞したミステリー映画なのだが、非常にアイディアに優れた物語だった。
ある日、16歳の娘が突如として疾走する。父親はあの手この手を使って娘の捜索を行う。
文字にして書くと非常にシンプルなミステリー映画。

search/サーチ』は全編、パソコンのモニター上で物語が描かれる。
父は主にパソコンによるSNSを駆使した捜索をする。
あるいはスマホによる通話で人の協力を煽ったりする。
たまに、監視カメラの映像に切り替わったりもするのだが、捜索作業のすべてを電子機器で行うため、全編の約9割がパソコンのモニター上で展開される。
とにかく見させられる映像が斬新。
思いも寄らぬ結末でどんでん返しもあり、鑑賞した当時はとても楽しめた。

そのため、『RUN/ラン』も大きな期待を持って鑑賞した。
シングルマザーの愛情深い母と、体が不自由な車椅子生活を送る娘クロエの話。
娘は母から自立しようと大学進学を希望するのだが……といった内容。

クロエの母親は所謂、毒親
深すぎる愛情のせいで、娘は体以上に、精神的な不自由さを強いられている。

最近、毒親ものは多くの類似作品があるので、設定自体には新しさを覚えなかった。
最も有名なところでいうと、日本の漫画作品の押見修造著『血の轍』。
映画だと、実際の児童虐待/育児放棄を熱かった『子宮に沈める』や、イカれた母を持つ実在のフィギュアスケート選手を描いた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』などが挙げられる。

search/サーチ』のような斬新な映像を期待してしまったがために、まあこんなもんか、ってな具合で本作を鑑賞していた。
だが、終盤にかけて、まさかの斜め上の展開を見せてくれ、一気に画面に食い入るようになってしまった。
詳細は伏せるが、まるで鈍器で後頭部を殴られたかのような不意打ちっぷりだった。
さすが、『search/サーチ』の監督。
ユニークなどんでん返しを仕込んでくれていたので、ワクワクドキドキしながら楽しんだ。
終わり方もなかなかのイカれっぷりで、良い意味で印象に残る映画体験となった。

ただ、一個だけ気になったのが、このどんでん返しの内容は果たして今の社会で成立するのか、といったことである。
完全犯罪の知識に富んだ相当なキレ者でないと、成立するとは思えない。
普通に考えたら、こんな頭のおかしな所業に出たとある人物は、簡単に警察に捕まってしまってもおかしくない。

法的にどうなの?って思わせてしまうツッコミ箇所は、私以外にも浮かぶ人は多いと思われる。
あまり警察組織はザルすぎるように思えるが、そのために田舎を舞台にしているのかな?とも考えた。
だが、どうなんだろうか。
個人的には、かなりの大きな脚本の穴のように思える。

やっぱり、ツッコミどころがある設定・展開は、納得できる理由を観客に提示してほしい。
脚本を製作した人の甘えに思える。

それ以外は、もう少し魅力的なキャラクターがいても良いかなと思った。
娘の協力者が何人かいるんだが、あんまりキャラ立ちがしていない。
母と娘は印象的で良いが、他にも観客が好きになれるキャラがいて欲しかった。

 


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■アンテベラム

movies-ocean.hatenadiary.com

 

RUN/ランの作品情報

■監督:アニーシュ・チャガンティ
■出演者:サラ・ポールソン
キーラ・アレン
パット・ヒーリー
セーラ・ソーン
WikipediaRUN/ラン
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):89%
AUDIENCE SCORE(観客):74%


RUN/ランを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)※まもなく配信
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)○(Blu-ray)
Netflix:-
※2023年6月現在