映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『カレ・ブラン』ネタバレなしの感想。人類が「社畜」と「家畜」に分類された監視社会を描く

■評価:★★☆☆☆2.5 

 

「監視社会」

【映画】カレ・ブランのレビュー、批評、評価

 

フランス制作の2013年4月6日公開のスリラー映画。

 

【あらすじ】思考や感情が統制された近未来。完全な管理のもと、人類は「社畜」と「家畜」に分類され、弱者判別テストで不合格になった家畜は、人肉として社畜の食卓に提供される不条理が繰り返されていた。幼いころから思想教育を受けてきたフィリップとマリー夫婦は、社畜として不自由ない生活を送っていたが、やがてふたりの間に亀裂が生じはじめ……。

 


社畜」か「家畜」にみに人類が分類される世界観。
あまりに強烈な設定に食指が動かされた。
びっくりさせられるのが、悠々自適に過ごせる階層が存在しない、ディストピア中のディストピア

裕層と貧民層が分断された世界で、貧民層の主人公が富裕層を倒す、みたいな流れのディストピアSFはよく見る。
時間を金に替えて生活するストーリーの『TIME/タイム』。
荒廃した地球は貧民たちが暮らし、富裕層は地球の近くにある人工衛星で優雅に暮らす『エリジウム』など。

だが、本作は社会に精神がそぎ落とされるまで働かさせられるか、あるいはモグモグされるのみである。

この、どうしようもない絶望感は見ていてしんどかった。
例えば、一定の条件を満たしたら富裕層になれる、といったご褒美的な何か提示されていたら、主人公に感情移入し、応援し、物語に入り込める。
だが、本作は、何をどうあがいても生活水準は変わらない。
努力する意味もないので、物語としてのカタルシスは1ミリもない。
ただただ観客は、可哀想な人たちを眺めているだけ。
せめて豊かな暮らしが難しいなら、不幸なら脱出する流れのほうが良かった。
フランス映画なので、芸術性に重きが置かれているのだろう。
だが、ディストピアの世界観にはエンタメ性を求めたくなるので、期待とは異なる作風だった。

あと、人を食す理由が描かれないのは気になった。
そんなに食糧難だったのだろうか。
でも社畜が働く社屋は立派だし、主人公のマンションも小綺麗。
農作物が不作だったり、あるいは家畜の豚や牛が育たない特殊な環境なのだろうか。
少しくらいは触れて欲しかったところ。

人を食す文化は、強者を象徴する意味もあったりする。
そういったことを描きたかったのだろうか。
であれば、なぜ、そこまでしか強さを示す理由があるのかも描いて欲しかった。

とはいえ、良かった箇所もある。
本作は説明が一切ない。
淡々と、キャラクターの行動が描写されるのみ。
あるいは映像で、今どんなことが行われるかをスマートに描いてくれる。

日本映画でよくありがちな、親切すぎて、むしろ観客をバカにしているだろってくらいに丁寧な説明シーンが皆無だったので雰囲気は良かった。
説明が多すぎると、作られた物語感が強くて感情移入や集中の妨げになる。

あまりに説明が少なくて、現状、何が起きているのか分かりづらいときもあった。
でも、個人的には問題ない。
わかりやすさよりも、映画としての完成度に振ってくれたほうが鑑賞後感が心地良いので。

個人的に最近は、監視社会ものをたくさん鑑賞している。
いくつか鑑賞した中で、本作の世界観の設定だけは良かった。
後は救いとなる要素を入れてくれたら最高だった。

キャラクターの魅力的な特徴は皆無だったので、アート系ではなく、エンタメが好きな人が鑑賞したら肩透かしを喰らうと思う。

 

 

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■RUN/ラン

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サイバーパンク: エッジランナーズ

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チェンソーマン

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カレ・ブランの作品情報

■監督:ジャン=バティスト・レオネッティ
■出演者:サミ・ブアジラ
ジュリー・ガイエ
ジャン=ピエール・アンドレアーニ
カルロス・リール
フェイリア・ドゥリバ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):41%

 

カレ・ブランを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
Netflix:-
※2023年7月現在