映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『[リミット]』ネタバレなしの感想。棺桶内のみで展開される閉所恐怖症厳禁ムービー

■評価:★★☆☆☆2

 

「映画オタクに向けた劇団ひとり映画」



【映画】[リミット]のネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

 

デッドプール』のライアン・レイノルズ主演の2010年11月6日公開のスリラー映画。

 

【あらすじ】トラック運転手の男が突然何者かの襲撃に遭う。意識を失った彼が次に目を覚ました場所は、地中に埋められた棺型の狭い箱の中だった。刻一刻と酸素がなくなっていくという極限状況の中、男は必死に脱出を図る。

 

本作は、いわゆるワンシチュエーション・ドラマとなっている。
ワンシチュエーション・ドラマは特定の場所のみで展開されるジャンルを指す。
有名どころを挙げると、老朽化した広いバスルームで鎖に繋がれた2人の男の脱出劇を描く『SAW』。
日本でもリメイクされた、謎の立方体(CUBE)に捕らえられていた数人の男女を描く『キューブ』もそう。
本作の『[リミット]』、『SAW』、『キューブ』は限定されたシチュエーションでの極限状態を描いているので、「ソリッド・シチュエーション」とも呼ばれる。

結論から言ってしまうが、本作は、かなり人を選ぶ映画。
『SAW』『キューブ』はシチュエーション内に様々な仕掛けがあるので、まだ楽しみやすい。
だが、本作は棺の中でのみ物語が展開されるので、いくらなんでも映像としての情報が少なすぎる。
全編90分間絵が変わらないので、個人的にはキツかった。
視点の変化はたびたび訪れるのだが、それでも棺の中であることは変わりないので、退屈。

以前、YOUTUBERのヒカルがカジサックか誰かに何かの動画で「背景が変わらないと視聴者が最後まで見てくれない」なんて話をしていたのを思い出した。
YOUTUBERは個人のため、外ロケなどが大変なせいか部屋で撮ることが多い。
それでも全部見てもらうために、小刻みに編集してテンポを良くしたり、動画も10分程度と短めに設定して、工夫をしている。

本作は90分間、ひたすら電話劇であり、映像はずっと狭苦しい棺の中。
さらに、私は閉所恐怖症なため、見ていてしばらくすると激しく動きたい衝動に駆られた。

主人公がむやみやたらとジッポライターの火をつけるのも気になる。
真っ暗だと俳優が何をしているのかわからないために火をつけているんだろう。
だが、あんな狭い空間で長時間火をつけていたら、酸欠が早まることは容易に想像できる。
どのくらい棺に閉じ込められるかもわからないので、オイルを温存することだって念頭に浮かぶはず。
そのため、主人公の行動は腑に落ちない。

あと火つけすぎてるのにライターが熱くならないのが不思議。
序盤でこういった違和感が次々に襲ってきてしまったため、集中力を保つのが厳しかった。

電話で助けを呼ぶとき、パニックになっていて相手を罵倒する、といった主にアメリカ映画でありがちなシーンが今作も健在。
個人的には苦手な演出である。
主人公がいらいらする理由を「不安障害で興奮してしまう」なんて理由で説明していた。
シンプルに閉所恐怖症でよくないだろうか?
そっちの方が納得できる。
どうも前者だと、いかにも事態を深刻化させてやろうといった制作者の意図が頭に霞み、ご都合主義感が否めない。

中盤辺りで、あるモノが襲来する。
これがストーリーとまったく関連性がないことにも笑えてしまう。
他の映画の脱出シーンで似たような展開はたびたび見かけるのだが、上手く活用して次の展開への橋渡しをするものだ。
しかし今回はビックリするほど生かさない。
上映時間の水増しか何かだろうか。
物語において、シーンが点で終わってしまうのは違和感を覚えてしまう。
うまくすべてを線で結んでほしいところ。

私はnetflixで視聴していたのだが、集中力が途切れるたびに一旦ストップし、konmariの片づけ番組を見て癒されたあとに再びリミットを見て、を3回くらい繰り返した。
余談だが、konmariは近藤麻理恵のことで、『人生がときめく片づけの魔法』というミリオンセラーの片づけ指南の本を出版している人。

話は戻るが、アメリカの映画批評サイト『rotten tomatoes』では批評家からはかなり評価が高い。
斬新な設定と、その縛りの中できっちりと起承転結を見せていることに対する評価だと思われる。
観客のスコアが20%分も乖離しているのは、万人はそんなに凝った演出を求めていないということだろう。
目の肥えた映画マニアにウケる映画なのだろうか。
万人に対して、この手のソリッドシチュエーション映画をすすめるなら、『SAW』、『キューブ』を強く押したい。
あと、下記の『暗黒女子』もどんでん返しがあって結構楽しめる。


限定された舞台で展開される物語のおすすめはコチラ。

■暗黒女子

movies-ocean.hatenadiary.com

 

[リミット]の作品情報

■監督:ロドリゴ・コルテス
■出演:ライアン・レイノルズ ロバート・パターソン
Wikipedia[リミット]
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):86%
AUDIENCE SCORE(観客):64%

 

[リミット]を見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)○(Blu-ray)
Netflix:-
※2023年7月現在