映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『アメリカン・パイ』ネタバレなしの感想。男の青春が詰まったおバカコメディ

■評価:★★★★☆4

 

非モテ童貞のための夢物語映画」

【映画】アメリカン・パイのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

アバウト・ア・ボーイ』のポール・ワイツ監督による2000年7月1日公開の青春コメディ映画。

 

【あらすじ】ミシガン州の高校に通うジムは毎日、一人で性的に処理する行為に耽るばかりで、もちろん恋人などいない。またDT(男の性的に未経験の意)という特に悩ましい問題も抱えていた。親友のオズやケビンやフィンチも同様、それぞれDTであり、問題を抱え込んでいた。悪友のスティフラーが自宅で開催するパーティに参加しても、成果は皆無に等しい。そこでジム達4人は決心する。「高校卒業までにDTを卒業して華々しく卒業しよう!」と誓い合った。彼らは思い思い、プロムの夜までにDTから脱すべく行動を開始するのだった。


私は様々な映画を視聴している。
名作と呼ばれる映画は、主人公の崇高な目的を達成する姿が描かれる。
例えば『ターミネーター2』は、いずれ人類を制圧するAIコンピュータの開発を止めるべく、主人公らが奮闘する姿を描く。
インターステラー』では、荒廃化が進み、いずれ地球に住めなくなる人類を移住させるため、地球に似た星を探して、主人公は宇宙に旅に出る。
素晴らしい大義名分を持った主人公達である。

本作の主人公の目標はDTを卒業するということ。
何と下らない目標だろうか。
私は性的な初体験が周囲に比べて遅く、悪戦苦闘したタイプの人間だった。
そのため、この下らないと思われそうな問題に奮闘する主人公らにめちゃクソ共感した。

特に最高だった箇所が2点ある。
1つ目は、お堅い彼女ヴィッキーに「やらせてくれ」と迫りすぎて距離を置かれてしまったケビン。
ヴィッキーの友達のジェシカに「性的に絶頂感を味あわせ、未知の世界を教えてやれ」とアドバイスされる。
(クレイジーな友人である)
そこで、ケビンは兄貴に相談する。
「何のためにやりたいんだ?」と訊かれ「彼女を喜ばせたい」と答えると、「合格」と告げたあと『秘伝の書(色んな人の体験記を集めた性行為大全集)』の存在と、隠してある場所をこっそり教えてくれる。

この流れが最高にいい。
秘伝の書というアイテムがいいし、それが誰もが利用できる公共の施設にこっそり隠されているというアイディがいい。
ネットが普及していない2000年ならではアナログなアングラ感が妙にワクワクさせてくれる。
今の時代に本作を作ったら、ネットがあるから、通常の検索じゃあ引っかからないようなサイトへのアクセス方法、などで演出されるだろう。

もう1つは、最もDT喪失からほど遠いであろう主人公ジムに、留学生のナディアが「勉強を教えて欲しい」と声をかけられる。
結果的に、なんとジムの家で勉強することに。
ナディアは「バレエの練習終わりに行くから、部屋で着替えてさせて欲しい」と頼む。
ここまでなら割と普通の展開なのだが、なんとジムは、友人のスティフラーに頼まれ、「彼女の着替えシーンをネットで動画配信して見せてくれ」と頼まれる。
バカなので了承するジム。(ここで急にハイテク)
しかもナディアはジムの部屋でとんでもないことをしてしまい……。
今の時代どころか、当時だって完全に犯罪行為で絶対にできない流れではある。
だが、とにかく本作はアイディアに富んだ演出が多く、見所が非常に多い。

現実的な話をすると、真性のDTはこんなものじゃない。
もっと闇が深い。
女の子と話せないどころか、人と話がかみ合わないので友達だってほとんどいないはず。
対して本作に出てくるDTにコミュ症は存在しない。
何なら彼女がいながら、なかなかやらせてくれない、というタイプのDTもいる。
DTの中でも明るいDTに属する連中だし、言ってしまえばDT界のエースなのだ。
だからこそ「非モテDTのための夢物語映画」なのである。
「こういうDTになりたかった」「こういうDTだったら例えDTでも楽しい日々を過ごせたはずだ」
DTどもにいきなりパリピでうぇい系の主人公の映画を見せたって、楽しいとは思えない。
なぜならあまりに非現実的なのだ。
深刻なDTに言わせたら現実とドラゴンボールの世界なくらい絶望的な距離感がある。
ちょっと頑張ったら、このくらいにはなれるかもしれない、
そういった手の届くと思えるレベルのDTたちが奮闘するから、DTに苦しんだ連中、あるいは現在もDTの連中にはこの映画が刺さるのだ。

私は続編にあまり関心を持てない人間なのだが、この映画はパート2がかなり評判がいいので、いずれ鑑賞して、感想をアップしたい。
余談だが、続編に関心の持てない理由は、まだ私がピュアだった映画ファンの頃、面白かった映画の続編に手を出して見事に裏切られ、その綺麗な心がすっかりスレてしまったからだ。
『バトル・ロ●●●ル2』のせいである。

アメリカン・パイのシリーズ一覧はこんな感じ。
アメリカン・パイ(1999)
アメリカン・サマー・ストーリー(2001)
アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦(2003)
アメリカン・パイ in バンド合宿(2005) ← スピンオフ
アメリカン・パイ in ハレンチ・マラソン大会(2006) ← スピンオフ
アメリカン・パイ in ハレンチ課外授業(2007) ← スピンオフ
アメリカン・パイ in ハレンチ教科書(2009) ← スピンオフ
アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会(2012)
正統な映画シリーズとしては①、②、③、⑧の全4作品。

rotten tomatoesのスコアがそんなに高くないのは、あまりにおバカ過ぎる映画だからだろうか。
確かにゴッドファーザーショーシャンクの空にに比べたら多少はふざけてはいるのだが。
でも、思春期のメンズには間違いなく刺さる素晴らしいコメディ映画。
女子は鑑賞しても全く面白くないと思う。


恋・性的に活発なキャラクターが登場するおすすめ映画はコチラ。

■ビリーバーズ

movies-ocean.hatenadiary.com

KAPPEI カッペイ

movies-ocean.hatenadiary.com

■アンダーニンジャ

movies-ocean.hatenadiary.com

 

アメリカン・パイの作品情報

■監督:ポール・ワイツ
■出演:ジェイソン・ビッグス クリス・クライン トーマス・イアン・ニコラス アリソン・ハニガン シャノン・エリザベス
Wikipediaアメリカン・パイ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):61%
AUDIENCE SCORE(観客):61%


アメリカン・パイを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)○(DVD)
Netflix:-
※2023年7月現在