映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『アメリ』ネタバレなしの感想。空想好きな女性アメリの日常と不器用な恋の行方を描く

■評価:★★★☆☆3

 


「現実逃避」


【映画】アメリのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

 

エイリアン4』『天才スピヴェット』のフランス映画監督ジャン=ピエール・ジュネの2001年11月17日公開のコメディ・ドラマ映画。

 

【あらすじ】両親にあまり構ってもらえず、コミュニケーションの上手く取れないアメリ。ある日、一人暮らしをしている自宅マンションに前の住人の物と思われる小さな箱を発見する。持ち主を見つけ出して渡すと非常に喜ばれる。これに快感を覚えた彼女は人を幸せにするために、ささやかないたずらを仕掛けていくことに。

 

アメリといえば、公開当時、単館系映画でひっそりと上映されていた。
女性を中心に口コミで話題が広がり、大ヒットに繋がった記憶がある。
邦画でいえば、『カメラを止めるな!』もそうだが、クリエイターとしては理想の売れ方である。
なぜなら、売れたことに作為性はなく、世間から作家としての本質を認められたと実感できる。

こんなに持ち上げたのだが、結論から言うと、個人的に『アメリ』は乗れなかった。
ストーリーが非常に追いにくい映画である事実に、見始めてすぐに気づく。

例えば、過剰とも思える脇役キャラたちの掘り下げ。
アメリの職場であるカフェのオーナーの好きなものは負けて泣くスポーツ選手で、キライなものは子どもの前で侮辱されて泣く親。
常連客の男の好きなことはぷちぷちを潰すこと、など。
キャラたちの物語の筋とは無関係なセリフも多い。
比喩表現が多いので、スムーズに頭に入ってこず、うんざりしてしまった。
登場キャラのほとんどがぶっ飛んでいるため、よくわからない動機の不思議行動の連続で物語が進展していく。

これらの演出がコミカルに、カラフルな絵で早いテンポよく描かれる。
フランス映画独特のノスタルジーな黄色みがかかった映像と、赤と緑を基調としたカラフルな画で。
邦画では決して出せないフランス独特の雰囲気のある映像を楽しませてくれるのは良い。

この手の映画はストーリーの筋を楽しむのではなく、感性で楽しむほうが良さげ。
個人的には、小説を書いているのでシナリオで見せてくれる物語を望んでいる。
そのため、私には合わなかった。

アメリは人を幸せにすることに喜びを覚えて、いたずらを仕掛けるようになる。
時には、嫌いな奴の家に勝手に侵入し、飲み物に異物を混入させたり、電源コードに針金を刺したり(コンセントに差したら爆発する)といった意地悪もする。
こういったサイコな行動の数々を笑って見れるかどうかがこの映画を楽しめる人だろう。

アメリ独特のぶっとんだ世界観を楽しんで没入できるかどうか。
特に冒頭10分で、楽しめる人とそうではない人をふるい分けてくる。
やけに攻撃的なスタイルも、作家性を感じさせるので潔くてありだと思う。

小説家の村上春樹アメリの世界観に近いようにも思える。
村上春樹はプロット(ストーリーの骨組み、あらすじみたいなもの。漫画ではネームを指す)を作らずに作品作りに取り掛かる。
エンタメ系の作家はある程度プロットを練り、面白いと思えるレベルまで練り込んでから書き始めるケースが多い。
エンタメではない純文学作家の村上春樹の場合、ある程度キーワードなどが溜まってきた段階で、プロットを作らすに書き出して、一気に第一稿を仕上げ
る。
村上春樹の意識は、読者を非現実世界へ連れていくためのドアを必ず登場させること。
『ダンスダンスダンス』の「いるかホテルの一室」、『騎士団長殺し』では「井戸の穴」など。
読者を物語の世界へ飛び込ませるためのドアである。
筋を楽しませるというか、世界観を楽しませる、目的が強い作家だと個人的には思っている。

話は逸れたが、『アメリ』もそんな印象を受ける。
余談だが、アメリにおける異世界へのドアは、小さな箱が置かれているバスルームの穴。

アメリがコミュニケーションをほとんど取らずに、ニノとの関係が縮んでいくさまは違和感をぬぐえない。
私は話を筋の面白さを求めがちではあるが、それでも★3にしたのは、独特な世界観に嫌悪感は抱かない。
こういったものにどっぷりつかりたくなる気持ちは理解できる。
海外旅行に行って非日常に飛び込みたいが、手間がかかるから映画で我慢するか、ってな時に最適な1本。

アメリカの映画評論サイト『rotten tomatoes』で、批評家よりも観客によるスコアが高いのは映画オタクである批評家の好きそうなテーマの考察やストーリーの構成の巧みさなどではなく、感覚で楽しむ映画だからだろうか。


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アメリの作品情報

■監督:ジャン=ピエール・ジュネ
■出演:オドレイ・トトゥマチュー・カソヴィッツ
Wikipediaアメリ(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):89%
AUDIENCE SCORE(観客):95%


アメリを見れる配信サイト

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※2023年7月現在