■評価:★★★☆☆3.5
「人の裏の顔の面白さ」
【映画】暗黒女子のレビュー、批評、評価
2017年公開の日本制作のミステリー映画。
秋吉理香子著の同名小説を原作とする実写映画版。
物語の舞台は、聖母マリア女子高等学院。ある日、学院の経営者の娘で、全校生徒の憧れの的だった〈白石いつみ〉が死ぬ。校舎の屋上から落下したのだが、自殺か他殺か、それとも事故なのか謎に包まれていた。わかっているのは、いつみの手にすずらんの花が握られていたことだけ。やがて、いつみが主宰していた文学サークルの誰かが彼女を殺したという噂が立つ。親友だったいつみから会長を引き継いだ澄川小百合は、部員が自分で書いた物語を朗読する定例会を開催する。今回のテーマは、「白石いつみの死」。それぞれが“犯人”を〈告発〉する作品が発表されていく。物語は5つ、動機と結末も5つ──果たして真実はどれ?
職場の同僚からイヤミスのおすすめとして紹介された一作。
イヤミスは読後、不快な気分になる特徴を持つミステリー小説につけられたジャンル。
イヤミスで最も有名な作品は、湊かなえ著の『告白』。
娘の命を奪われた女性高校教諭が、犯人が紛れている自分のクラスの生徒たちに復讐をする物語。
特に映画版が有名だが、両方手に取った私の印象としては、原作となる小説版のほうが好みだった。
『告白』の映画版は、中島哲也というCMディレクターが監督している。
CMディレクターの作品は良くも悪くも映像が煌びやかな特徴がある。
どうしても、中島哲也はケバケバしい映像は癖が強く、個人的には苦手である。
スタイリッシュな雰囲気は良いのだが、物語を楽しむには、どうも邪魔臭く感じる。
話を戻すが、この度、鑑賞した『暗黒女子』は、やっぱりイヤミス感全開だった。
序盤から中盤にかけての展開も面白い。
清廉なお嬢様たちが通う学校が舞台で、人気の女子生徒の白石いつみが命を落としてしまう。
同じ文学サークルに所属していたメンバーたちが、個人的に白石いつみについて知っていることを、小説として執筆する。
サークル内の「小説の朗読会」で発表し、真相に迫っていく展開。
白石いつみは美しい女性で、誰もが憧れる存在である。
だが、一人一人の小説を通した告白によって、化けの皮が剥がれていく。
様々な人物の視点から、少しずつ確信に迫っていく流れは、ついつい画面に没頭してしまった。
面白かったのが、白石いつみだけではなく、メンバーたちも中々のハードな秘密を抱えている。
こんな純粋そうな人物があんなことをしていたなんて。
といった展開の連続で、裏の顔が明かされていくたびに、キャラクターに厚みが増していって楽しかった。
あと、舞台がお嬢様学校という品の良さも良かった。
生徒たちは、その他の生徒とすれ違うと「ごきげんよう」と挨拶をする。
ヤンキーのような下品なルックスや言動のキャラクターはいない。
百合の要素もありつつ、みんなが上品なので、映像的にも華があって良い。
厳かな雰囲気がフリとなり、クライマックスの衝撃を際立たせてくれる。
全体を通した印象としては、韓国映画の『お嬢さん』を連想した。
『JSA』や『オールド・ボーイ』の監督の作品。
舞台は日本統治下の朝鮮半島。
莫大な遺産を持つ、上月家に潜入する詐欺師の男と協力を強いられた女、そしてターゲットとなる上月家の女を描く。
主に展開される舞台が上月家の豪邸。
1930年代のアンティークな美術に囲まれた品のある空間で、男女の謀略が繰り広げられる。
詐欺師グループの女と上月家の女の百合要素もありつつ、想定外の展開を迎える上質なミステリー。
3部構成になっていて、『暗黒女子』と同様に、各々の視点で描かれ、物語の真相に迫っていく。
予想を上回る事実が明かになっていくのも見応えがあって面白い。
コンセプトだけは、『お嬢さん』と『暗黒女子』は共通点がかなり多かった。
『暗黒女子』に話を戻すが、最後の最後はイヤミス感を出すためか、少しやり過ぎな気がした。
ファンタジーとまではいかないが、一気に非現実な展開を迎えている印象を受けた。
ただまあ、気になったのは最後くらいで、全体的には面白い。
イヤミスのおすすめ作品はコチラ。
■ハッチング 孵化
暗黒女子の作品情報
■監督:耶雲哉治
■出演者:清水富美加
飯豊まりえ
清野菜名
玉城ティナ
小島梨里杏
平祐奈
升毅
千葉雄大
■Wikipedia:暗黒女子(ネタバレあり)
暗黒女子を見れる配信サイト
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Hulu:○(見放題)
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Netflix:-
※2023年4月現在