■評価:★★☆☆☆2
「移動する大都市のダイナミックさ」
【映画】移動都市/モータル・エンジンのレビュー、批評、評価
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、『ホビット』シリーズ、『キング・コング』のピーター・ジャクソンが制作・脚本を務める2019年3月1日公開のSF映画。
原作はフィリップ・リーヴ著の同名タイトル『移動都市』。
【あらすじ】文明を荒廃させた最終戦争から数百年後。生存者たちは、移動型の都市に住み、物資を奪い合っていた。そして各都市が激突する中、巨大移動都市ロンドンが台頭して世界を征服していく。やがて、1人の少女が反撃に出る。
公開された当時、劇場ではうんざりするほどに予告が流れていた覚えがある。
あまりにも配給会社が売りたい思いが強く出ていたせいで、私はあまのじゃくとなってしまい、敬遠していた。
公開後の評判も高いものではなかったので、レンタルや配信でも鑑賞する機会は、遙か彼方へ追いやられていた。
個人的に、現在、監視社会を舞台とした作品を洗いざらい鑑賞してきる。
「監視社会 映画」で検索すると、いくつかの未鑑賞作品がヒットした。
その中の1本であった本作をようやく鑑賞するに至った。
地球が何やかんやあって滅び、なぜか人々は移動する都市で生活をしている設定のストーリー。
冒頭は素晴らしかった。
映画の世界で、最も巨大な都市であるロンドンに狙われ、追いかけ回される小さな都市をダイナミックな映像で描く。
CGではあるんだが、重厚感の凄まじい巨大なロンドンが、逃げるネズミのような小都市を補食するためのチェイスシーンから始まる。
迫力が凄まじすぎて画面を、食い入るように見入った。
【移動する都市】のルック自体も鮮度が高い。
巨大な都市が移動する姿なんて今まで観たことがないし、オリジナリティを感じさせる素晴らしい映像だった。
バックに流れる音楽も最高。
印象的なストリングスの音色が扇情的で、手汗握って鑑賞していた。
YOUTUBEに音楽がアップされていたのでURLを貼り付けておく。
約8分の曲なのだが、3分辺りから流れる旋律が最高なのだ。
改めて映画は音楽が重要なんだなと考えさせられる。
この音楽があったからこそ、映像のダイナミックさに拍車が掛かる。
話を戻すが、良かったのは冒頭の10分で見られるここまでである。
その後は、恐ろしいほどに面白くなかった。
そもそもの疑問なのだが、なぜ人類は移動都市という手段で生活するようになったのかの説明がない。
なぜ留まってはいけないのだろうか。
一応、反移動主義的な組織があり、定住している連中もいるらしい。
尚更、なぜ、移動する選択を取ったのか、が気になる。
例えば、モンゴルには定期的に住居を移動する遊牧民が存在する。
遊牧民は羊だかなんだかの家畜を飼っていて、家畜の餌となる牧草がなくなったら別の土地に移住する。
このように遊牧民には移住するに十分な動機がある。
生活の要である羊ベースで留まるなり、移動するなりを繰り返している。
だが、本作の都市が移動する動機の猫写は皆無。
都市と表現しているくらいなので何百人もの人口を収容する。
大人数を生活させるほどの巨大な都市を移動させるとなると、キチガイな量の燃料が必要になる。
この燃料問題についての言及もない。
確かに移動都市のダイナミックな映像は面白い。
だが物語を成立させるにふさわしい動機の描写が不十分なので、脚本の致命的な穴となっている。
さらにはストーリーも酷く凡庸。
移動都市が存在する世界観ならではのオリジナリティのある展開が見られない。
せっかくなら、もっと色んなタイプの移動都市を魅せて欲しい。
娯楽だけの都市だったり、あるいは恋愛都市だったり。
人の欲求に訴えかけるユーモラスな移動都市が出てきたら面白くなりそう。
アイディアは面白いけど、活かしきれていない印象。
本作は原作があるので、もしかすると原作はマシなのかもしれない。
あくまで私の感想は劇場版のみである。
あと、何となく『天空の城ラピュタ』の影響を受けている印象があった。
中身のクオリティは雲泥の差。
設定・シナリオ共に優れたSF作品のおすすめはコチラ。
■宇宙のランデヴー
移動都市/モータル・エンジンの作品情報
■監督:クリスチャン・リヴァース
■出演者:ヒューゴ・ウィーヴィング
ヘラ・ヒルマー
ロバート・シーハン
ジヘ
ローナン・ラフテリー
レイラ・ジョージ
パトリック・マラハイド
スティーヴン・ラング
■Wikipedia:移動都市/モータル・エンジン
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):26%
AUDIENCE SCORE(観客):48%
移動都市/モータル・エンジンを見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)、○(字幕・有料)、○(Blu-ray)、原作はコチラ
Netflix:-
※2023年7月現在