映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『エゴイスト』ネタバレなしの感想。虚勢を張って生きてきたゲイが大切な人と出会う

■評価:★★★☆☆3.5 

 

「守る存在が生きがいを与える」

【映画】エゴイストのレビュー、批評、評価

 

トイレのピエタ』『ハナレイ・ベイ』の松永大司監督による2023年2月10日公開のドラマ映画。

 

【あらすじ】田舎町でゲイであることを隠して思春期を過ごしてきた浩輔。大人になり上京した彼は、母を支えながら働く青年・龍太と出会う。やがて2人は惹かれ合い、時には龍太の母も交えながら、親密な時間を過ごしていく。

 

映画評論YouTuberがおすすめしていたので鑑賞に至った。
ストーリーは、ブランドものに包まれることで安心するゲイの浩輔が、母の介護に奮闘しつつ、夢を追う男・龍太と出会って仲良くなる内容。

誰かに勧められない限りは確実に見なかった作品。
差別するわけではないが、恋愛対象が女性である私にとって、ゲイの物語は食指が動きづらい。

特に恋愛シーンが映されると目を背けたくなる。
嫌悪感を抱くのは生理現象なので仕方ないし、だからゲイの物語は積極鑑賞はしない。

本作は特にベッドでのやり取りを濃厚に描いていて、正直きつかった。
絡みの最初から最後までしっかり見せてくる。
キスの時に舌の絡めるのはもちろん、入れてから果てるまでのすべてを生々しく描写する。
行為後のシャワーシーンのおまけもあり。
こんなにも本気のゲイの絡みを見せてくる映画は初めて。

あまりにリアルなので、浩輔扮する鈴木亮兵、龍太扮する宮沢氷魚はすごいと思った。
良く女優が脱いだりすると体当たり演技、なんて評される。
もちろん覚悟は必要だろうけど、非恋愛対象性別者に対しての全力の絡みの演技をするのは、体当たりの究極系のように思えた。
だって押し寄せる生理現象を飲み込んで演技をするのだから。
2人の役者を心から尊敬する。

特に鈴木亮平はすごい。
孤狼の血2』では残虐なサイコパスを演じていたが、本作はまるで真逆の人畜無害な心優しいゲイそのものになりきっていた。
こんなにも柔軟に幅広い役をこなせる擬態力が凄すぎる。
山田孝之レベルの日本が誇る名俳優だと思う。

もちろん相方の宮沢氷魚も良かった。
ゲイっぽくない、恐らくバイセクシャルのキャラクターなんだろうけど、彼の儚い空気感が、役にピッタリだった。
この二人の役者じゃないと本作は成立しなかったであろう圧倒的な説得力がある。

また設定が感情移入出来る内容なのも相まって、2人には共感した。
序盤ほど、中盤以降は濃密な交流はないが、感情移入が働くことで二人の肉体的な接触の嫌悪感は薄れていった。
人間の感情移入の機能の凄さを実感した印象。

終盤に差し掛かる辺りで、大きな対立が浩輔に襲いかかる。
その後のテーマが描かれる展開なんだが、これはどうなんだろうか。
詳細は伏せるが、正直、ゲイ設定じゃなくても成立する内容だと思う。
何で敢えてゲイの物語にしたのか、の必然性が欲しかった。

例えば、元SMAP草なぎ剛主演の『ミッドナイトスワン』がある。
これは、母親に憧れるニューハーフが主人公で、娘のような少女との交流を描くストーリーは、心を激しく揺さぶられた。
子供を孕めないニューハーフと少女の交流なんて、想像するだけで胸が苦しくなる。

本作はそういったゲイ設定の必然性に欠けているので、どこかもやっと残った。

ストーリーや、キャラクターだけで考えると良い作品だった。
設定に問題がなければ、鑑賞することをおすすめしたい。

 

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サンクチュアリ 聖域

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■RUN/ラン

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エゴイストの作品情報

■監督:松永大司
■出演者:鈴木亮平
宮沢氷魚
中村優子
和田庵
ドリアン・ロロブリジーダ
柄本明
阿川佐和子
Wikipediaエゴイスト
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):100%
AUDIENCE SCORE(観客):-

エゴイストを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(有料)○(Blu-ray)
Netflix:-
※2023年12月現在