映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

配信ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』ネタバレなしの感想。冷戦期を舞台にチェスの天才少女を描く

■評価:★★★★☆4

 

「チェスの面白さ」

【映画】クイーンズ・ギャンビットのレビュー、批評、評価

 

マイノリティ・リポート』『ザ・リング』『LOGAN/ローガン』『アウト・オブ・サイト』のスコット・フランク監督による2020年10月23日にNetflix配信開始となった配信ドラマ。
ハスラー』『地球に落ちてきた男』のウォルター・テヴィスによる同名原作小説の実写版となる。

 

【あらすじ】9歳の少女エリザベス・ハーモン(ベス)は交通事故で母親を失い養護施設に入れられる。そこでは薬物を子どもたちに投与しており、ハーモンは依存症になっていく。黒人の同級生ジョリーンをのぞいて生徒とも教師とも馴染めないハーモンはある日ひとり地下室で用務員のシャイベルが興じるチェスに興味をそそられ、彼からチェスの手ほどきを受ける。

 

TwitterYouTubeなどのSNSであったり、filmarksのような映画レビューサイトなど、多くのメディアで好評価を受けている本作。
チェスを題材にしており、日本人からしたら馴染みのないテーブルスポーツについて描かれているので、私としては入りづらく、鑑賞が先延ばしになっていた。
最近は、『ONE PIECE(実写版)』『サンクチュアリ聖域』『マスクガール』と、連続して配信ドラマを鑑賞しており、しかもすべての作品が面白かった。
本作も間違いないだろうと期待して、流れに乗って本作を視聴するに至った。

主人公のエリザベス(以下、ベス)は事故で親を失い、孤児院に拾われた女の子。
見た感じ、どこにでもいそうな平凡な子なのだが、地下室で用務員さんがプレイしていたチェスに興味を持ち始める。
子供嫌いそうな神経質そうな用務員さんにしつこく絡み、チェスを教えてもらうことに。
次第にベスはとんでもないチェスの才能を開花していく、といったストーリー。

チェスなのだが、ざっくりと説明すると、将棋と似た競技となっている。
ターン制でプレイヤーは交互に駒を動かし、キングを取った側の勝利。
将棋と大きな違いといえば、将棋は取った駒を使えるのに対し、チェスは使えないくらい。

とはいえ、チェスの細かいルールは知らなくて問題ない。
本作はチェスが分からない人でも楽しめるように作られている。
そのため、作中内でチェスのルールについては一切語られない。
ではなぜ無知な観客が楽しめるのか。
それは天才児であるベスが【いかに強いか】を分かりやすく描いている。

例えば、用務員さんとチェスをプレイするのだが、最初の頃はベスは負けまくる。
あまりの悔しさで、毎晩、施設の保険医のような男からもらった薬でドーピングを決め、寝る時に天井にチェス盤をイメージしたイメトレを繰り返す日々を送る。
次第に用務員さんに勝ち始める。
無口で強面で性格の悪そうな用務員さんだが、ある日、唐突にベスにこうつぶやく。
「君はすごい」と。
ベスの努力がようやく認められ、鑑賞している私まで嬉しくなってしまった。

またベスは初めて大会に出場する。
大人の男が多く参加する中、少女はベスともう一人くらい。
そんなベスは、試合中とんでもない早さで駒を打つ。
敵がじっくり考えて打ったと思ったら速攻で打ち返す。
すると、大の大人である対戦相手がベスに対して目を見張り、戸惑い始める。
そんな好戦的なベスの試合を観戦するいかにもチェスのベテランそうなジジイが隣の人とヒソヒソ話をしたり、観客が集まり始めたりする。

こんな感じで第三者のリアクションを用いたりと、いかにベスが強いプレイヤーであるかを分かりやすく演出している。
もはやチェス盤なんて映す必要ないんじゃないかって思うくらい。

ベスは親を失ったりと、不遇な人生を送っているので、観客は序盤から感情移入している。
なのでベスの快進撃は、観客にとって胸が踊る。

あとキャラクターも魅力的だった。
そもそもベスのルックスが美しい。
男ばっかり出てくるので、エリザベスの顔がアップになるだけで映像に華が添えられるようなもの。

服装も良かった。
ベスのクラシカルでドレッシーな装いは、現代が舞台とは異なる見栄えなので、服好きの私としては楽しかった。
次の大会ではどんなオシャレなドレスを着てくれるのかささやかな楽しみになっていた。

またベスは瞳が大きいので、チェスのような頭脳スポーツだと、対戦相手は大きな瞳にすべての見透かされているんじゃないか、と錯覚を覚えそうに思える。
チェスは強いけど、それ以外はまるでダメなのも良い。
薬をやったり、アル中だったり、男との付き合い方も下手くそ。
美人だからこそ、ダメっぷりが映えて良かった。
やっぱり美人でチェスが強くて、と、長所ばかりだと鼻につく。

他のキャラもみんな素敵だった。
用務員さんの冷たい感じとか、唯一の友人の施設の黒人のお姉さんっぷりとか、個性に溢れる敵プレイヤーとか。
魅力的なキャラばっかり出てくるので、ついつい1話、観たらすぐに次を観たくなる。

ストーリー自体は、斜め上を行くような激しい展開はない。
結末も容易に想像できる。
主にキャラの魅力的や演出で見せていくタイプのドラマとなっている。

チェスを知らなくても心配無用なので多くの人に勧めたい。
チェスの専門用語はほとんど出てこないし、ストーリーがベタなので、誰でも理解できるし楽しみやすい。

 

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クイーンズ・ギャンビットの作品情報

■監督:スコット・フランク
■出演者:アニャ・テイラー=ジョイ
ビル・キャンプ
モーゼス・イングラム
マリエル・ヘラー
ハリー・メリング
トーマス・ブロディ=サングスター
Wikipediaクイーンズ・ギャンビット(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):96%
AUDIENCE SCORE(観客):94%

 

クイーンズ・ギャンビットを見れる配信サイト

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※2023年9月現在