映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『空気殺人 TOXIC』ネタバレなしの感想。韓国で実際に起きた加湿器殺菌剤事件を題材とするドラマ

■評価:★★☆☆☆2.5 

 

「韓国史上最悪の事件の残酷さ」

【映画】空気殺人 TOXICのレビュー、批評、評価

 

2022年9月23日公開の韓国映画

 

【あらすじ】原因不明の肺の病気で妻を亡くし、息子が重体となってしまった医師テフン。彼は自ら原因を特定し、決して責任を認めようとしない企業に敢然と立ち向かっていく。

 

本作はとある映画評論YouTuberが高く評価をしていたので、鑑賞するに至った。

タイトルに不穏な文字が含まれているので、ミステリー物なのかと思っていた。
実際に、ミステリー要素は皆無。
韓国で実際に起きた加湿器殺菌剤事件を題材とした社会派実話ドラマとなっている。

あらすじは、ある日、主人公の息子が何の前触れもなく、唐突に倒れる。
病院に連れていくと、肺が硬くなる謎の病を患っている事実が発覚し、即入院することに。
だが、すぐに妻も同じ病にかかり、命を落とす。
主人公は悔しい想いを握りしめ、原因を追求する流れ。

冒頭は、スピード感があって良かった。
社会派ドラマとなると、一つ一つの描写を厳粛かつ丁寧に描くイメージがあり、テンポが悪い印象。
だが、本作は開始5分で事件が発生する。
ゆったりとした時の流れを我慢できないタイパ主義にも対応した近年のエンタメを彷彿とさせる。(私もだが)
しかし、主人公を襲う悲劇は残酷の極み。
あまりの理不尽さに、すぐに主人公に感情移入できるので鑑賞しやすい内容。

すぐに主人公は加湿器に使われる加湿器用殺菌剤が原因である事実を突き止め、販売元の世界的企業オーツー社に裁判を起こす。

本作の敵となるオーツー連中が極悪人だこと。

もちろんオーツーサイドは「我が社の殺菌剤は安全」と主張する。
だが、裁判中に主成分を変えて、新しいバージョンにアップデートしようとする。
それは良いのだが、当然、古い毒性のある殺菌剤は大量の在庫がある。
300億ウォン分とのこと。(2023/11/15現在、1ウォン=0.12円)
廃棄するのは勿体ないからと、全部売ろうとするのだ。

確かに、目の前にいる人間を刃物で刺しているわけではないので、命を奪っている実感はないかもしれない。
でも、主成分を変更している時点で多くの被害者が出ている自覚はある。
しかも今回の事件による最終的な死者は約20000人だそう。
町1つ分、壊滅させたようなもの。
経営陣はとんでもないサイコパスである。

また被害者側に近寄り、大金や主人公の入院中の息子の臓器移植
を、ちらつかせ、示談に持ち込むさまも描かれており、最悪。
もはや被害者ではなく、自社を守るためだけに力を注いでいる。

とまあ、こんな風に感想を書いたが、個人的にはあまり入り込める物語ではなかった。
もちろん実際に起きた事件なので、心苦しい描写は多く、感情移入はする。

だが=面白くて興味深い作品、にはならない。
加害者の企業が上記のような行動を取るのは、物語の悪役としてはステレオタイプ、雛形通りである。
そのため、本作は物語としては魅力を感じるような目新しさは皆無だった。

観客が驚くようなどんでん返しもないので、本作を鑑賞するなら、物語としての面白さは期待しないほうがいい。
あくまで韓国でこんな凄惨な事件かあった、といった知識を入れる目的で鑑賞することをおすすめする。

 

 

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空気殺人 TOXICの作品情報

■監督:チョ・ヨンソン
■出演者:キム・サンギョン
イ・ソンビン
ユン・ギョンホ
ソ・ヨンヒ
Wikipedia空気殺人~TOXIC~

 

空気殺人 TOXICを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(見放題)○(DVD)
Netflix:-
※2023年11月現在