映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『ハウス・オブ・グッチ』ネタバレなしの感想。ファッションブランド「GUCCI」の創業者グッチ家の経営権争いを描く

■評価:★★★★☆4

 

「家族経営の脆さ、愚かさ、醜さ」

【映画】ハウス・オブ・グッチのレビュー、批評、評価

 

『エイリアン』『ブレードランナー』『ブラック・レイン』『テルマ&ルイーズ』『グラディエーター』『ハンニバル』『ブラックホーク・ダウン』『オデッセイ』のリドリー・スコット監督による2022年1月14日公開の史実に基づいたドラマ映画。
主演はミュージシャンのレディー・ガガ

 

【あらすじ】1995年3月27日。ファッションブランド・GUCCI (グッチ)の創業者の孫にあたる3代目社長マウリツィオが、ミラノで暗殺される。その背景には、グッチ一族の確執と崩壊があった。捜査が難航する中、やがて殺害を指示した黒幕の正体が明らかになる。

 

公開当時、YouTubeTwitterなどのSNSでは好評の意見が多かった。
私はそもそもがファッション好きなので、鑑賞予定に組み込んではいた。
1年半以上、先延ばしになって観ることになった理由として、いかんせん上映時間が長い。
2時間38分という大作っぷりで、この度、三連休に入ったのでようやくGEOに足を運び、手に取った。

結論から言うと、かなり面白い内容だった。
確かに3時間近い長さはあったが、すぐに没入でき、あっという間にエンドロールが流れていた。

そもそもグッチ(GUCCI)は誰もが知るアパレルのハイブランド
私のイメージとしては、立ち位置的にヴィトン、シャネル、バーバリー辺りと横並び。
上には、至高の存在であるエルメスが鎮座しており、下には、バレンシアガ、ジバンシー、フェンディ、ボッテガ・ヴェネタセリーヌ辺りが首を狙っている印象。
大学に例えると早慶くらいの品格がある。

ちなみに私も、GUCCIのアイコンアイテムであるビットローファーを持っている。
十万円超の価格のする革靴だが、凄まじいくらいに履き心地が良い。
あまりに高価で勿体ないので、3年くらい前に買ってまだ1度しか履いていない。
結局、3000~4000円で買ったGUの革靴を毎日履いている。
そんな格式高いブランドの物語。

GUCCIは元々家族経営のブランドで、創業者の孫にあたるマウリツィオという男が本作の主人公の1人。
冒頭では、マウリツィオはまだ法学部に通う大学生。
マウリツィオがとあるパーティに参加すると、胸を半分くらい出したいかにも強欲で性格の悪そうな女が近づいてくる。
レディ・ガガが演じるパトリツィアが本作のメイン主人公。
彼女は、金持ちであり、いずれはグッチを継ぐであろうマウリツィオに近づく。

グッチが家族経営なのは知らなかったし、あらすじを読むだけでも面白みが深い。
そもそもキャラクターが魅力的。
マウリツィオは明らかにピュア度全開のバキバキDT。
そんな彼に、パトリツィアが女をむきむきに使い倒して迫るのだから面白い。

というかレディ・ガガが素晴らしかった。
確かに色気を撒き散らしてはいるのだが、序盤のほうはまだ可愛げがある。
ストーリーが進み、マウリツィオと結婚してからは豹変。
自らの欲望や気性の粗さが露骨になる。
まずは服がすごい。
お前はハリネズミなのか、とツッコミたくなるほどに毛の長い毛皮を、まとっている。
また髪型も笑える。
ストーリーが進むにつれて毛が逆立ち、お前はライオンなのか、いじりたくなるほどのボリュームになる。
当然、言動も日に日に直接的になる。
劇中にパトリツィアが出てくると、どんな行動を起こすのかヒヤヒヤしつつも、気になって仕方なくなる。

脇を固めるキャラクターも誰もが一癖あって良かった。
シリアスになりすぎず、キャラクターたちが分かりやすくコミカルな言動の演出がされているので、上映時間の長さはあまり感じない。
ストーリーの展開も明らかに悲劇に向かっていくので、食い入るように見入ってしまう。

また、アパレルファンとしてはトム・フォードが出てきて、心がぐっと捕まれた。
トム・フォードは、2004年までグッチでデザイナーを務めていた著名なデザイナー。
女子はトム・フォードの化粧品とか持っている人もいるので知っている人もいるだろう。
トム・フォードはグッチを復活させた立役者、という話は何となく知っていたので、本作の後半に差し掛かる辺りの転換期に出てきたのは胸熱だった。

というのも、私はMBというファッションインフルエンサーに一時期影響され、ファッションが好きになった。
MBが誰でもオシャレになるロジックをものすごくシンプルに語っている。
それはコーディネートする際、ドレスとカジュアルの割合を7対3にするとオシャレに見えるというもの。
つまりドレス寄りに服を選定し、わずかにカジュアルダウンさせるという意味。
MBは、このロジックの正しさをトムフォードの言葉で裏付けしている。

それは、

【男が最も色っぽく見える瞬間は、スーツのネクタイを緩めた時だ】

という言葉。
とてつもなく腑に落ちる、シンプルな言葉。

諸々あって私にとって、思い入れがあるブランド。
本作は満足度の高い鑑賞体験となった。

しかし本作を見ていると家族経営の愚かさ、醜さ、脆さの悪いところすべてが出ている気がする。
最近も家族経営をしていたジャニーズ事務所が性加害で話題となっている。
家族経営は後任者を子供の頃から育成できたり、家族という特別な関係性によって信頼が担保されていたり、良いところもあろう。
今度は家族経営が上手くいったケースのドラマを鑑賞したくなる。

 

 

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■マスクガール

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エスター ファースト・キル

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ハウス・オブ・グッチの作品情報

■監督:リドリー・スコット
■出演者:レディー・ガガ
アダム・ドライバー
ジャレッド・レト
ジェレミー・アイアンズ
サルマ・ハエック
アル・パチーノ
Wikipediaハウス・オブ・グッチ(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):61%
AUDIENCE SCORE(観客):83%

 

ハウス・オブ・グッチを見れる配信サイト

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