映画『ニューヨーク1997』ネタバレなしの感想。巨大な刑務所と化したマンハッタンに囚われた大統領を救出に向かう

■評価：★★☆☆☆2

「島流しの先の島の恐怖」

【映画】ニューヨーク1997のレビュー、批評、評価

『ハロウィン』『遊星からの物体X』『クリスティーン』『ゼイリブ』のジョン・カーペンター監督による1981年7月10日公開の近未来SFスリラー映画。

【あらすじ】近未来、巨大な刑務所と化したマンハッタンに大統領専用機が墜落。元特殊部隊出身で終身刑のスネークは恩赦と引き替えに大統領救出に向かうが、残された時間は24時間しかない......。

『センス・オブ・ワンダー』を感じられるSF作品を探していて、GEOのSFコーナーに陳列されたDVDを一本ずつチェックしていたら、本作が目に止まったので鑑賞するに至った。

SF作品における『センス・オブ・ワンダー』は、鑑賞した際に生じる、ある種の不思議な感覚のこと。
と、ウィキペディアには書かれている。
人によって様々な定義がありそうではあるが、私の解釈としては、オリジナリティに富んだ世界観に沿った価値観を持ち、言動を見せるキャラクターを描くこと。

つまり、我々が住む現実世界を生きるキャラたちの元に突如として異星人がやってきて日常が瓦解するのではなく、宇宙人がやってきて１年経った世界とか、現実からかけ離れた世界で生きるキャラを面白く描いているのが『センス・オブ・ワンダー』となる。

本作はまさにセンス・オブ・ワンダーを感じさせる、思わず鑑賞したくなるユニークな設定である。
犯罪者がむちゃくちゃ増えた近未来のアメリカで、ニューヨークのマンハッタン島をまるごと監獄とした。
マンハッタン島の大きさは東京23区の1/7程度の大きさで、ニューヨークの中心となるエリアである。

エリア一帯を監獄にするとか、アメリカ人的な大胆な発想でバカすぎる設定で笑える。
マンハッタン島に閉じ込められた囚人はどんな生活をしているのか。貨幣経済は成立しているのか。貨幣がないなら、物資のやり取りはどうなるのか。治安は？　食生活は？　仕事はしているのか、夜の生活はどうなのか、娯楽はあるのか、などなど気になって仕方ない。
またマンハッタンの周りに住む一般人は、囚人らにどんなことを思っているのか。
ぶっ飛んだ発想故に、多くの興味を持って鑑賞した。

ストーリーは、マンハッタン島に大統領の乗ったヘリが墜落する。
どうやら生きているらしいので、元特殊部隊に所属していた終身刑の男が救出に向かう流れ。

結論から書くと、全然期待外れの作品だった。
こんなにも期待とは異なる内容だとは思わず、肩透かしを食らった。

マンハッタンは犯罪者まみれなので、どんな恐ろしい場所なのかワクワクした。
だが、全然怖くない。

第1村人として遭遇する男は、明らかに精神がいかれた感じで、まともに会話ができる感じじゃない。
また、クレイジーズと呼ばれるサイコ集団に遭遇するけど、すぐに襲って来ることもない。
まるで観客に恐怖を感じさせてくれる演出がないので、大統領救出作戦がとてつもなく生ぬるく感じる。
せめて、マンハッタン島に降りる前に、マンハッタン島の連中にやられた無惨な亡骸とかみせて、恐怖を煽って欲しかった。
主人公は24時間以内に救出しないと命を落としてしまう仕掛けを施されているので焦ってる。
でも私には遠足でも楽しんでいるような緊張感の乏しさ。

ジョン・カーペンター監督の『ハロウィン』といえば、スリラー演出が冴えていた。
例えば、『ハロウィン』の仮面キラーであるマイケルは、ターゲットのヒロインをすぐに狙わない。
ヒロインの周りの人間からじわじわと襲っていく。
そのため、いつヒロインが狙われるかと、観客はドキドキしながら鑑賞するはめになる。

あるいは、神出鬼没のマイケルは、たびたび、ヒロインを遠くからじっと観察するシーンが映される。
ただ黙って見つけているだけだが不気味で仕方ない。

過去作では優れたスリラー演出を見せてくれたのに、本作はマンハッタン島を怖く見せることを失敗している。

また、本作は有名ゲームの『メタルギアソリッドシリーズ』に多大な影響を与えているとのこと。
メタルギアソリッドシリーズを手掛けた小島秀夫は作家性の強い作品を多く創っている。
『デス・ストランディング』のみのプレイしたことがあるが、とてもオリジナリティ溢れる内容だった。
そのため、本作も期待したのだが、期待外れの結果となった。