配信ドラマ『サンクチュアリ聖域』ネタバレなしの感想、北九州出身の不良が金稼ぎのため力士になる

■評価：★★★★☆4

「相撲の格式の高さ」

【映画】サンクチュアリ聖域のレビュー、批評、評価

『ガチ星』『めんたいぴりり』『ザ・ファブル』シリーズの江口カン監督による2023年5月4日配信のNetflix配信ドラマ。

【あらすじ】体は屈強だが、投げやりな性格の青年が相撲部屋に入門。力士になった彼はとがった振る舞いでファンを魅了しながら、伝統と格式を重んじる角界を揺るがしていく。

世間で大きな話題となっていたので鑑賞に至った。
相撲という女子受け皆無な題材のドラマにも関わらず、テレビやSNSなど様々な媒体で本作の評判を耳にした。
クオリティの高さは間違いないと、大きな期待を持ってNetflixを契約し、再生ボタンを押下した。

結論から話すと期待以上の最高の出来栄えの傑作ドラマだった。

とにかく出てくるキャラクターが全員、魅力的。
最たるは主人公である。
主人公の猿桜（えんおう。本名は小瀬）は元ヤンキーで、【目標８００万】と書かれた銀行通帳を握りしめて相撲の道に入ることになる。
相撲に興味がなく、ただ金だけが欲しい男なので、相撲に対しての敬意、愛着などは皆無。
格式高い相撲を舐め腐っている言動を露骨に見せる
部屋の親方や兄弟子たちに対して敬語は一切使わない。
稽古終わりはタバコを吸う。
土俵に入っても頭を下げない。
試合でも髪は結わず、オールバック。
勝ったら全力でガッツポーズをするなどなど。
覚えているシーンをささっと書いてみたが、もっとある。
1500年の歴史である国技である神聖なスポーツに対して、彼は草野球でもやる感覚で試合に挑む。

本当にナメたやつである。
にもかかわらず相撲が強いのが笑える。
稽古はマジメにやらず、先輩力士の猿谷や同期から「四股をきっちりやれ」と何度言われてもやらない。
でも頭も良いので、上手く敵の隙をついて華麗に倒す。
だからこそ目が離せない。
多くのルールに雁字搦めになった世界の異端児は観ていて面白い。

度々、主人公の猿桜の相撲を見た部屋の親方やスポーツ記者の女性らは、「あいつの試合は沸く」と評する。
すごく良い表現だった。
ただ強いだけじゃない。
観客に魅せる相撲を取るのだ。
3話くらいで、最高に沸いた試合があったのだが最高だった。
恐らく死ぬまで忘れることはない猿桜らしい試合。
猿桜の試合を見ると、彼のファンになる。

もちろんキャラクターの魅力は猿桜だけではない。
猿桜が所属する猿将部屋を取材する記者の女性も良かった。
元々は政治部にいたのだが、猿桜と同じような問題児。
左遷され、まったく興味のない相撲担当となる。
まるで無関心だった相撲だが、猿桜の破天荒な相撲を通じて、相撲にみるみるうちにハマっていく。
相撲のしきたりなど、良くわかっていない彼女はすっかり相撲に魅了される。
頑固な性格の彼女が、猿桜が与える影響によって変化していく様は見ていて気持ち良いものがある。

本作の何よりも素晴らしいのが彼女の心境の変化が理解出来るくらい、相撲を魅力的に描いているところ。
私は初めて知ったのだが、1500年の歴史の中で頂点に立つ横綱はたったの72人しかいないそう。
頂点を目指して巨体がぶつかり合う。
迫力がすごいのなんの。
眼の前の一試合に命をかけ、全力でぶつかってる気迫が画面を通じてひしひしと伝わってくる。
まるで飛散る汗や匂いまでも、画面越しに伝わって来るほどの臨場感だった。
役者たちは1年間、肉体改造をしたらしいので、その苦労は十分、ドラマ性に反映されている。

続編があれば絶対に鑑賞するが、役者の負担が大きすぎるので難しそうである。
本作は世界的に大ヒットを飛ばしたらしいが、今もなおシーズン2の制作は未定である。

出てくるキャラクターがみんな魅力的なので、また彼らの新しい姿を観たいもの。

余談だが力士の挨拶である「ごっつぁんです」を、ありがとう代わりに使っている。
男なら略して「ちゃんです」と言ったりもしていて可愛い。
屈強な男たちの口から「ちゃんです」を聞くと耳障りが良い。
私以外にも共感できる人はいるはず。

しかし、相撲を題材にしたドラマを良く作ったなあと関心する。
本作のクオリティがあまりに高いので、新しい相撲ドラマを作るのはハードルが高すぎて難しそう。

とにかく、相撲は一度、鑑賞したくなった。
チャンスがあれば両国国技館に足を運びたい。

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