映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

小説『エデン』ネタバレなしの感想。地球型の惑星に不時着した隊員たちを描くファーストコンタクト物

■評価:★★★☆☆3.5 

 

「異星の不可解さの魅力と進化について」

【小説】エデンのレビュー、批評、評価

 

ソラリス』のスタニスワフ・レムによる1959年刊行のSF小説

 

【あらすじ】惑星エデン―宇宙空間に巨大なオパールのしずくのように煌めくその星に、6人の地球人科学者を乗せた宇宙探査船が不時着した。だが、地表で彼らが見たものは、巨大な生体オートメーション工場と、その大量の廃棄物、そしてエデン人の累々たる死骸の堆積だった。一つの個体が労働部分と思考部分に分かれた複体生物であるエデン人に、いったい何が起こっているのか?地球人科学者はエデンの人との知的接触をはかろうと試みるのだが…。未知なるものとの出会いを豊かな想像力と哲学的視点から描き、『ソラリス』『砂漠の惑星』とともに三部作を築きあげる問題作。(紀伊國屋書店引用)

 

 

アニメ、映画、小説などの評論に定評のある岡田斗司夫のおすすめSF図書として、本作を挙げていたので読むに至った。

著者のスタニスワフ・レムは、名前の響きがカッコ良いので、いずれは著作を読みたいと思い、ようやく念願が叶った。

もともと映画にもなっているレムが原作小説を手掛けた『ソラリス』の映画は鑑賞済。
ソラリス』の映画は好きなのだが、印象としては人の感情を深堀りし、個人的な解釈を述べる哲学的な印象が強い。

レム自身、少年時代のIQが180を超えており、神童に分類される天才。
そのため、彼の著作は小難しい印象が強くて、なかなか手が出せずにいた。
廃版となり、プレミア価格の本作をメルカリで安価で手に入れられたので、思い切ってページをめくった。

主人公らの宇宙船が墜落するところから始まる。
しばらくは脱出を試みる描写が続くのだが、登場人物の固有名が出てこないのが面白かった。
ドクターとか物理学者などと、職業名でキャラクターが描写される。
キャラクターの感情や変化、成長を描いて見せる気は毛頭ないことを示唆している。
レムが本作で描きたいことは、エデンの星の面白い生態と、そこに住む生き物についてだろうと、冒頭から伝わってくる。

なかなかに面白い決意表明で、興味深く読み進めていった。
だが、いかんせん読みづらい。
エデンの環境が地球とあまりに異なりすぎて、描かれる情景描写がなかなかイメージしづらい。
古典文学のせいか、出てくる単語も古めかしいものがあったり、表現もやたらと長文で、読み進めるのには普通の本の2倍は要した。
それでも先の展開は気になるので、時間をかけてじっくりと読み進めた。

また、レムは読者が分かりづらいことを見越していたのか、セリフで説明されるシーンがあるのは良かった。
壊れた宇宙船と、エデンを捜索する2チームに別れて物語は進む。
視点となる探索チームが色々と発見し、宇宙船に戻ったときに改めて仲間に「こんな物を見たんだ」と結果報告する。
このシーンが読者の乏しい理解を補完してくれるので、親切設計で良かった。

杯を持つ異様な形状や奇妙な動きをする植物。
人工的に作られた建造物の中にある、謎の生物の亡骸の数々。
魅力的な謎ばかりで好奇心そそられる。

本作は、所謂ファーストコンタクト物に分類されるSF小説。
未知の文明や生き物と遭遇し、どのような科学反応が生まれるのか、をコンセプトとしたジャンル。

クライマックスでは、このコンセプトが最大限に炸裂し、むちゃくちゃ面白かった。

だが、やっぱり、私の頭では本作が真に描きたいテーマを汲み取ることができず、天才レムの主張を噛み砕いて思考を巡らすまでに至れなかったのが残念。
進化をテーマとしているらしいので、もしチャンスがあれば、何年後かに再チャレンジしたい。
読みづらい本ではあるが、表面で描かれるのエデンの探索を始めとするエピソードの数々は面白いので、ファーストコンタクト物が好きな人にはおすすめしたい。

 


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幼年期の終り

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エデンの作品情報

■著者:スタニスワフ・レム
Wikipediaスタニスワフ・レム
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