映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

小説『幼年期の終り』ネタバレなしの感想。無数の宇宙船に上空を取れられ支配される人類を描く

■評価:★★★☆☆3.5 

 

「人類の進化と終末を描く」

【小説】幼年期の終りのレビュー、批評、評価

 

2001年宇宙の旅』『宇宙のランデヴー』『楽園の泉』のアーサー・C・クラークによる1952年刊行(日本では1964年刊行)のSF小説

 

【あらすじ】異星人の宇宙船が地球の主要都市上空に停滞してから五十年。その間、異星人は人類にその姿を見せることなく、見事に地球管理を行なった。だが、多くの謎があった。宇宙人の真の目的は? 人類の未来は?――巨匠が異星人とのファースト・コンタクトによって新たな道を歩みはじめる人類の姿を描きあげた傑作!(ハヤカワオンライン引用)

 


アニメ、映画などの評論に定評のある岡田斗司夫の推薦図書ということで、拝読に至った。

勧めている当該動画は下記。

youtu.be

突如として世界中の都市の上空に現れた無数の宇宙船に、人類が支配するところから物語は始まる。

浅野いにおの『デッド デッド デーモンズ デデデ デストラクション』、藤子 f 不二雄のSF短編漫画『いけにえ』は本作の影響下と思われる。

いわゆるファーストコンタクト物に分類される。
地球外知的生命体と初めて接触した人類を描くジャンルで、私が特に好きなSFのひとつ。
例えば三体星人との諍いを描いた『三体』は、あまりに地球人の価値観や文明とは異なる文明を持っていて、人類はとんでもない脅威にさらされた。
想像力の限界を容易に飛び越える超展開が最高に楽しい1冊だった。
他にも子供にも楽しめる『E・T』も立派なファーストコンタクトもの。

本作の人類と対立するオーバーロード(宇宙人の総称)もなかなか不気味。
まず、自らの姿をずっと隠し続ける。
オーバーロードらは人類と似た容貌なのか、あるいはまるで異なる簡単には受け入れ難い姿なのか。
作中の人類はネガティブな感情に襲われつつ、あらゆる考察を行う。

オーバーロードの顔役で、主人公が定期的に接触するカレルレンは、「世界連邦を築きなさい」と指令する。
国で分けるのではなく、一つになれといった意味。
当然、世界が統一されることに反抗する自由連盟を名乗る組織も出てくる。
だが、主人公を含む、多くの人類はオーバーロードを支持する。

というのも、オーバーロードの指導は結果的に地球に安寧をもたらしているのだ。
技術提供をし、飢餓をなくし、犯罪を亡くし、地球に平和が訪れていた
基本的にオーバーロードは地球人に危害を与えない。
唯一、人類に対して声を荒げたのは、無闇に動物を殺す行為のみ。
そのため、オーバーロードによって闘牛の文化が失われた。

このように、オーバーロードは何故か人類に良くしてくれる。
同時に重要な隠し事もしている示唆もある。
一体、何を企んでいるのか。
謎が魅力的過ぎて、ページをめくるのが惜しくなるくらい。

中盤からは、かなり展開がのんびりになる。
砂漠で暮らすととある獣医の富裕層の家のパーティに招かれた、テレビ関係の仕事をするジョージに視点が移る。
ここからが、本筋から離れたような話が続き、物語の動きも鈍くなって、読み進めるのに時間がかかり始める。
ジョージのエピソードがどう本筋に、関わるのかの予想がつかなすぎる。

それでも頑張って読み進め、ようやく終盤でオーバーロードの秘密が明かされる。
オーバーロードの真の狙いに分かりやすさがなく、テンションとしては尻窄みのまま膜を閉じた。

しかし、描かれる目的(テーマ)は壮大であり、興味深さもある。
ネタバレになるので詳細は掛けないし、あまりにスケールが大きくて私の脳では考察なんてとても出来ないが、人類が辿る運命の一つを提示していてユニーク。

あと前回、読んだ同著者アーサー・C・クラークの『宇宙のランデヴー』に引き続き、相変わらず、キャラクターが微妙。
オーバーロードの代表のカレルレンとか、あるいはジャンという主要人物の1人など、もう少しユニークに描いて欲しいところ。

 

ファーストコンタクトもののおすすめ作品はコチラ。

■三体

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■三体(Netflix版)

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■宇宙のランデヴー

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幼年期の終りの作品情報

■著者:アーサー C クラーク 
Wikipedia幼年期の終り
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