映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

TVアニメ『呪術廻戦』ネタバレなしの感想。人間の負の感情から生まれる呪霊を祓う呪術師を描く

■評価:★★★☆☆3.5 

 

「人間の負の感情の禍々しさ」

【TVアニメ】呪術廻戦のレビュー、批評、評価

 

少年漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』にて、2018年14号から連載されているダークファンタジー・バトル漫画のアニメ版。
放送期間は下記の通り。
第1期:2020年10月3日~2021年3月27日。
第2期:2023年7月6日~12月28日。

 

【あらすじ】並みはずれた身体能力を持つ高校生・虎杖悠仁。祖父が死んだ夜に呪術高専一年の伏黒 恵と出会う。
彼は、虎杖の持つ“呪物”を回収しに来たというが、ちょうどその“呪物”は虎杖の先輩らによって封印が解かれていた。“呪物”が引き寄せた、呪いの化け物に襲われる先輩たち。そこに虎杖と伏黒が駆けつける。

 

悪しきコロナにより社会の閉塞化が加速していた2020年は、少年ジャンプ漫画の『鬼滅の刃』がブームとなっていた。
2020年の11月に劇場公開された『鬼滅の刃 無限列車編』はコロナを吹き飛ばすかの勢いで興行的収入を伸ばし、社会現象にまで発展したのは記憶に新しい。
人気絶頂の中、原作漫画が連載終了となったが、鬼滅ロスに喘ぐ漫画ファンの中で密かに囁かれていたネクスト鬼滅として、本作『呪術廻戦』が挙げられていた。

『呪術廻戦』は同じく少年ジャンプ連載のダーク・ファンタジーバトル漫画。
アニメは人気だし、単行本の売り上げも2023年現在、9000万部を突破する鬼や呪霊も尻尾を巻いて逃げ出す異次元のヒットを記録している。
テレビアニメ版の第一期が放送終了となった同年2021年にはエピソード0の劇場版が公開され、鬼滅ほどではないが、公開収入138億円というとんでもない記録を叩き出している。

当時、勤務先の会社でも呪術廻戦のアニメにハマっている人は多く、色んな人に勧められた。
私もブームに乗って2話だけ観たのだが、それほどハマることはなかった。
というのも、『呪術廻戦』に登場する能力=呪術という概念が、少年ジャンプの人気漫画『HUNTER×HUNTER』の念能力、『ナルト』のチャクラに該当する既視感たっぷりの概念。
鑑賞しなくても良いかな、と、判断し、早々にリタイアした。

だが、本作の異様な単行本の売上や2023年に作者が来年中ほ完結を言及していたので、もう少しだけ鑑賞してみようと、軽き気持ちで再視聴した
そしたら思いの外、どっぷりとハマってしまった。

以下は第2期までを鑑賞した感想。

確かに能力バトルの肝となる呪術の存在は、既視感がある。
だが、本作ならではのユニークな能力がいくつかある。

まずは言霊使いの狗巻というキャラ。
発した言葉で相手をコントロールする強い能力なのだが、事故を防ぐためか、普段から語彙を絞っていておにぎりの具しか発さない。
キャラ設定もぶっ飛び過ぎていて笑える。
だが、能力はかなり強力なので良いギャップになっている。

世間で良く耳にする五条悟の強キャラ感にもやられた。
恐らく本作で一番人気である彼の能力、無限は、五条悟に触れられないという最強っぷり。
時間を止めるとか、記憶を操作するなと、多くの最強能力はあるが、触れられなければ=無敵。
五条悟は他にも多くの能力を有していて、飄々としたキャラも相まって、なぜ人気なのか納得した。

本作で1番良かったのはセリフ。
HUNTER×HUNTER』や『ナルト』『鬼滅の刃』にはない、文学的で、豊かな表現のセリフが多く見られた。
作者は文系らしく、本作の見どころの1つである。

苛められっ子にの息子に対し、母が「世の中には、違う水槽や海まであるから無理に学校に行かなくても良い」と放った。
学校という世界を水槽に例えた。
確かに水槽って狭いと息苦しさを覚える。
でも周りを見渡せば広い水槽や、圧倒的な広大さを持つ海まである。
分かりやすいいい例えだった。

他にも、一度、呪術を学ぶ高専をやめた後に、証券会社勤務を経験した呪術師の七海がいる。
彼はサラリーマン時代に、「呪いも他人も金さえあれば無縁でいられる」と考えていた。
このように頭に残る言葉をちらほらといただける。

ストーリー展開、キャラクターなど、本作は様々な魅力を持っているが、個人的にはセリフに惹かれた。
漫画作品だとセリフに心を奪われた作品はあまりないので、不思議な経験となった。

あとストーリーの密度も濃いのは良かった。
最近は、アニメをちらほら観ているが、どこかテンポが緩く、無駄が多い印象があり、ジャンクフードを食べているのような感じで途中でリタイアすることが多い。
本作は多くの情報がぎゅっと凝縮されているので、栄養価のある料理を食べている印象。

第二シーズンでは、肉体と魂、どっちが先か、といった哲学的な話もある。
メインエピソードの『渋谷事変』では、敵対するとある術師の婆さんの孫に起きる不可解な現象がそれを描いていて、『攻殻機動隊』を思い出した。
攻殻機動隊』は高度な義体や電脳と呼ばれる能デバイスでネットや人同士と繋がれるサイバーパンク世界の漫画。(アニメ映画版も有名)
あまりに人間のあらゆるものが人工物で代替できるため、どこまでが人でどこまでが人ではないか、が語られる。
攻殻機動隊』では魂をゴーストと呼び、たびたび義体まみれの主人公が「私のゴーストが囁いている」と口にする。
人としての自覚を再認識するためなのか、印象的で好きなセリフ。
『渋谷事変』でも答えの難しいテーマへの言及には知的好奇心が刺激されて良い。

一点だけ欠点を挙げるなら、比べる対象となる、『HUNTER×HUNTER』とは、やっぱり設定の甘さがある。
色んな呪術の術式(HUNTER×HUNTERでいうなら発)が見られるが、どういった原理で、どれだけの苦労を代償として術式を会得するのかが描かれないので、戦闘が軽く見えてしまう。

とはいえ、見所も多いので問題なく楽しめた。

 


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呪術廻戦の作品情報

■監督:朴性厚(第1期)
御所園翔太(第2期)
■出演者:虎杖悠仁 - 榎木淳弥
伏黒恵 - 内田雄馬
釘崎野薔薇 - 瀬戸麻沙美
五条悟 - 中村悠一
両面宿儺 - 諏訪部順一
乙骨憂太 - 緒方恵美
禪院真希 - 小松未可子
狗巻棘 - 内山昂輝
パンダ - 関智一
七海建人 - 津田健次郎
ナレーション - 榊原良子
Wikipedia呪術廻戦
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):87%(SEASON 1)、92%(SEASON 2)

 

呪術廻戦を見れる配信サイト

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※2024年1月現在