映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『少女は卒業しない』ネタバレなしの感想。卒業式を迎えた少女四人の決断を描く

■評価:★★★☆☆3.5 

 

「いつかは卒業しなければならない」

【映画】少女は卒業しないのレビュー、批評、評価

 

桐島、部活やめるってよ』『何者』『正欲』の著者、朝井リョウによる2012年3月刊行の青春小説の実写映画版。
公開時期は2023年2月23日。

 

【あらすじ】廃校が決まったある高校では、校舎の取り壊しと卒業式を目前に控えていた。生徒たちは、それぞれ卒業の日を特別な気持ちで迎えようとする。

 

卒業をテーマとした作品。
ストーリーは卒業と同時に学校が廃校になり、各々の女子学生が、秘めた思いに決着をつけていく青春ドラマとなっている。

四人の視点人物で描かれており、群像劇というか連作短編のイメージ。
群像劇というと、散り散りだった複数の視点人物がクライマックスに集結して、物語をダイナミックに描く印象がある。

だが、本作は四人の視点人物の直接的な交流はない。
ちょっとの関わり程度なら描かれるが、私の見間違いでなければ、視点人物同士が会話することはなかった。
各々が自身の卒業に向けて大きな一歩を踏み出す=決断を見せてくれる。

個人的に好きだったのは、軽音楽部に所属する女の子の話。
卒業ライブのトリが生徒の投票により、軽音楽部に所属するヘヴィメタルバンドのヘブンズドアに決まる。

ヘブンズドアゴールデンボンバーのようなおフザケ系のエアバンド
楽器の音源や歌は全部、別撮りした素材を流しているだけ。
パフォーマンスは過剰の限りを尽くした悪ふざけ。
ボーカルはデスボイスだし、学校最後の卒業ライブのトリには明らかにふさわしくない。
にも関わらず、部内で話し合った結果、ヘブンズドアに決まる。 
正直、冒頭の段階では1番興味がわかないエピソードだった。
まるで先の展開の予想がつかないので、ワクワク感は皆無だった。

何となく、視点人物の少女がヘヴンズドアのボーカルに男性としての興味はある感じが描かれるのだが、そうなんだ、くらいの捉え方だった。

だが、卒業ライブ当日に、思わぬ展開を迎える。
まるで予想していなかった角度だったのでびっくりしたし、期待していなかった分の落差で心を掴まれた。

私の好みの展開でもあったのでカタルシス抜群。
本作で最も好きなエピソードとなった。

正直、他のエピソードは驚きが少なく、物足りなさがあった。
例えば東京の学校に進学する女の子と、地元に残る男のカップルの話はあまりに普通過ぎる。
敢えて描く必要はないように思える。

ただ、最後に本作の主人公となる女の子の答辞内容は心に残った。
ネタバレでもないので記載するが、『世界のすべてだと思っていた学校がなくなり……』の言葉。

本作は何で廃校という設定を組み込んだんだろう、と思っていた。
確かに学生からしたら学生時代は学校がすべて。
子供にとって学校=世界。
通っていた学校が無くなるという喪失感は、卒業=決断のための第一歩を強制的に踏み出させる後押しになるな、と実感した。
学校が残っていれば、卒業への踏ん切りがつかなくても自身を正当化させてしまうのかもしれない。

社会に出たら、会社が気に食わなければ転職したらいい。
家族が気に入らなかったらLINEをブロックして疎遠になったらいい。
でも十代の頃の学校って、嫌になっても簡単に逃れられない。
親などの大人の支配下にあるので、責任の弱い十代は自分の意思を100%通すのは難しい。

さまざまな感情体験をした学校=世界を失う彼らの一歩は、大人にはない眩しさがあった。

 


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少女は卒業しないの作品情報

■監督:中川駿
■出演者:河合優
小野莉奈
小宮山莉渚
中井友望
窪塚愛流
佐藤緋美
宇佐卓真
藤原季節
Wikipedia少女は卒業しない

少女は卒業しないを見れる配信サイト

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※2024年1月現在