映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

小説『君のクイズ』ネタバレなしの感想。クイズ大会の最終問題で対戦相手が不可解な正答を叩く

■評価:★★★★☆4

 

「視野の広い思考を持とう」

【小説】君のクイズのレビュー、批評、評価

 

『地図と拳』で第13回山田風太郎賞、第168回直木三十五賞を受賞した小川哲による2022年10月7日刊行のクイズ・ミステリー小説。

 

【あらすじ】『Q-1グランプリ』決勝戦。クイズプレーヤー三島玲央は、対戦相手・本庄の不可解な正答をいぶかしむ。彼はなぜ正答できたのか? 真相解明のため彼について調べ決勝を1問ずつ振り返る三島は──。

 

 

『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『トークサバイバー』の演出、佐久間宣行さんがYouTubeの動画で本作をおすすめしていたため、読むに至った。
当該動画は下記となる。

youtu.be

優勝賞金一千万が掛かったクイズの大会、Q-1グランプリの決勝戦を迎える。
主人公の三島玲央と、対戦相手の本庄絆は、共にあと一問、正解すれば勝利する。
対戦相手の本庄絆に至っては既に2回誤回答している。次の問題で間違えたらルールによって失格になり、三島の勝利が確定する。
まだ1問しかミスしていない三島のほうがやや有利。
そんな中、出題者は、問題を告げられる前に本庄は早起きをし、意味不明な回答し、正解する。
『ゼロ文字押し』による劇的な幕を閉じで啞然とする三島。
状況説明を渋る大会を主催する番組側や、本庄に納得ができず、三島は個人的に真相を追求していく。

結論、めちゃくちゃ面白かった。
192ページと短い話ということもあり、久しぶりに1日で読み切ってしまった。
何なら3〜4時間くらいで一気に読みさせられた。
そのくらい大金が懸かったその後のクイズ人生を左右するような大舞台で、後に引けない本庄の『ゼロ文字押し』は魅力的だった。

対戦相手の本庄は『ママ、クリーニング小野寺よ』という、良く分からない最後の正答内容にも、三島と共に読者にも違和感を与えてくる。

普通に考えたらヤラセだろうと思う。
本庄を優勝させるため、番組の演出が事前に問題や答えを教えたのだろうと。
にしても引っかかる。
なぜなら、敢えて本庄や番組側にヤラセが疑われるような『ゼロ文字押し』をする必要はない。
適当に出題者に少し問題を読ませた上でピンポンを押して回答すればいい。
あなたが答えを知りたければ、ぜひ、本作を手に取ってもらいたい。

本作は回想による物語となる。
本庄との決勝戦の最後の問題は十六問目。
大会が終わり、一問目から振り返りながら、三島と本庄の過去が描かれる。
なぜ三島はクイズプレイヤーを目指すようになったのか。
クイズによって、最愛の彼女と知り合えた出来事。
また三島の大切な思い出と紐づくクイズの問題もあり、赤裸々にエピソードが語られる。

あるいは本庄についても描かれる。
三島は真相を暴くため、本庄が過去に出演したクイズ番組映像を片っ端から収集して研究する。
本庄がクイズプレイヤーとして成長していく様が、三島を解釈を通して描かれていく。

また本作ならではの面白さは、競技クイズの特殊性の解説がある。
例えば、クイズの問題には『確定ポイント』なるものが存在する。
問題の読み始めは、答えが無数に存在する。
読み進められ、特定のキーワードが積み重なることで、徐々に答えが縛られていく。
そしてその問題の正答が1つに絞られるキーワードこそ、確定ポイントがある。

通常は確定ポイントを聞いたら早押しするのが定石。
だが、どうしても後に引けず、勝つためにはライバルよりも先に答える必要がある状況も出てくる。
そこで、クイズプレイヤーはいくつかの技術を駆使する。

例えば、プレイヤーが回答ボタンを押すと、出題者は慣性の法則が働いて、問題文を1、2文字だけ読んでしまう。
これを利用して、確定ポイントの直前に押し、解答を推理など。

ただ知識だけでの勝負ではない競争力の技術の解説が面白くて興味深い。

後、本作を読んでいて、本当に頭の良い人は視野が広い人なんだなと、思った。
まるで神が空から下々を見下ろすように。

とにかく、見どころ満載の最高のミステリー小説。
人が命を奪われないミステリーも悪くない。
個人的には、若干、オチは微妙だった。
でも、興味深い箇所がてんこ盛りなので、めちゃくちゃ楽しい読書体験になった。

 

 


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君のクイズの作品情報

■著者:小川哲
Wikipedia小川哲
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