■評価:★★★☆☆3.5
「望んだ未来を歩める権利は女性にもある」
【映画】あのことのレビュー、批評、評価
2022年12月2日公開のフランス制作のドラマ映画。
【あらすじ】1960年代のフランスでは、中絶は違法とされていた。学業優秀で前途有望な大学生のアンヌだったが、大事な試験を前に思いがけず妊娠が発覚する。すべてを1人で抱え込み、追い詰められていく。
定期的にチェックしている映画評論系ユーチューバーがおすすめしていたため、鑑賞するに至った。
1960年代のフランスが舞台で、中絶手術が非合法だった時代に、望まぬ妊娠に苦悩する女子大生を描くドラマ。
さぞかしきつい内容なんだろうなと思って覚悟して鑑賞したが、思ったよりも目を背けたくなった。
妊娠した瞬間に孤独に苛まれる主人公のアンヌがあまりに不憫過ぎる。
彼女は親からも、期待されていて勉強熱心。
普段は学生寮に住んでいるが、たまに実家に帰ると、親に吐かれる言葉は『勉強』や『学校』ばかり。
そんな彼女も年頃だし、たまにはハメを外したくなるのは人の性。
まさか病院で妊娠が発覚。
もちろん「私は今は勉強に集中したいし、中絶してほしい」と医者に懇願する。
だが、医者は「そんなことしたら逮捕される」と拒否。
仲の良かった友達にも思い切って妊娠を打ち明けるも「私達には関係ない」と切り捨てられる。
遊び人で女友達の多い同級生の男に相談するも、距離を置かれる。
感情移入しっぱなしで、彼女を見守り続けるのが辛くなる。
相手を信頼し、思い切って心の内を打ち明けても拒絶されたら、どこに救いを求めたらいいのだろうか。
そんなアンヌは自分の膣に熱して消毒した金属の棒を突っ込み、自ら中絶を試みる。
痛々しくて何度も停止ボタンを押したくなる。
しかし、当時は、こんな悩みを抱えた人は多いだろうと思って調べてみた。
背景として第一次世界大戦以降、人口増加を奨励するために中絶を禁止する法律が誕生したそう。
何なら避妊の宣伝すらも、禁止されていたらしい。
今思えば狂ってるとしか思えない。
国益最優先で国民の苦悩なんてまるで考えられていない。
フランスの女性の哲学者のシモーヌ・ド・ボーヴォワールの中絶を必要とする主張から中絶の合法化運動に発展していったそう。
なぜ、今の時代に本作が制作されたのか。
ボーヴォワールの主張の本質は、女性の自由の尊重である。
望まぬ妊娠によって、未来の選択肢が狭まるのは風習(中絶が違法)に原因があると主張する。
ハリウッド映画界のセクハラ問題から端を発したmetoo問題など、世界中で女性の社会進出、女性の社会的地位の向上が進む現代には、本作はぴったりテーマの映画。
繊細なテーマだし、目をそらしたくなる映像もあるが、特に男の方が観るべき映画だと思った。
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■ノマドランド
■少女は卒業しない
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あのことの作品情報
■監督:オードレイ・ディヴァン
■出演者:アナマリア・ヴァルトロメイ
ケイシー・モッテ・クライン
サンドリーヌ・ボネール
■Wikipedia:あのこと(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):99%
AUDIENCE SCORE(観客):77%
あのことを見れる配信サイト
U-NEXT:○(有料)
Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)、○(DVD)
Netflix:-
※2024年5月現在