映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

漫画『住みにごり』ネタバレなしの感想。兄貴という怪物が住む実家に帰省した青年を描く

■評価:★★★★☆4 

 

「実家って気持ち悪い」

【漫画】住みにごりのレビュー、批評、評価

 

たかたけしによる2022年4月28日に第1巻が刊行されたスリラー漫画。

 

【あらすじ】実家には怪物が暮らしていた。兄貴という名の──
29歳、夏。会社から長めの休みをもらった僕は、久しぶりに実家に帰省した。住んでいたのは父母、そして35歳、無業無言の兄だった。この家族は怪物なのか?それとも家族とは怪物なのか?新ホームドラマ、襲来。(ビッコミ引用)

 


お笑い芸人の麒麟の川島と、かまいたちの山内がMCを務める漫画を題材としたバラエティ番組『マンガ沼』で、本作が繰り返し言及されていた。
2024年3月1日の放送では、本作の作者、たかたけしさんが番組に登場し、川島と山内からの様々な質問に答えていた。
印象としては、本作に登場するキャラクターの言動がとにかくユニークだったので、強い興味を抱き、読むに至った。

実際に読み始めると、キャラクターのパンチが強烈すぎる。
まず、実家に寄生する兄貴のフミヤ。
作品内では一言も喋らない。
母親とはこっそり話しているような感じはあるのだが、コマにはっきり登場する場面ではセリフは一切なし。
また、引きこもりの癖に舌が越えていて、何を食べても首を傾げる。
主人公が作ってあげた料理などにも癖を発動する不愉快な人間で、主人公の末吉は心からうんざりしている様子。
他にも無数の変な癖があり、読者の私からすると冒頭からフミヤに釘付け。
そもそも1巻の1ページ目で、フミヤは町中の人の命を奪うシーンから始まる。
実際は末吉が見た夢なのだが、明らかにフミヤは不穏な空気を漂わせている。
読者からしたら、いつ何をしでかすのか、半分恐怖、半分期待を抱かせられる。

とにかくフミヤをはじめとする登場人物の挙動が各々おかしく、物語全体に黒い靄を産む。

母もそう。
脳出血で下半身不随だが、親しみのある優しそうな絵柄で描かれる。
母は夫(末吉の父親)の酒癖や喫煙を良く思っておらず、酒の紙パックが置いてある箇所に、夫に対する汚い言葉の悪口を殴り書きで羅列した張り紙が貼ってある。

他にも父親は過去には酒癖が悪く、DV癖があった様子。
そんな父も何やら怪しい秘密を隠している様子。
まるで新興宗教にのめり込むやばい信者の家のような不気味な雰囲気がある。

家族以外にも末吉の幼なじみの女の子だったり、登場人物の誰もが何かを抱えている。

しかし誰もが、なかなか核心に迫る行動は見せず、上手い感じに読者をじらしてくる。
この長引く緊張感がたまらなくて、ページをめくるスピードが加速する。

絵はお世辞にも上手いとはいえない。
だが、スリリングな演出が上手いからすぐに物語にのめり込んだ。

あとキャラクターの描写も非常に丁寧。
ほんの些細な感情の揺れまで見逃さずに描く。
作者は相当に人間観察してきているんだろうな、という片鱗が伝わる。

たぶんこの作者なら、今後の作品も面白く描き続けられる信頼感がある。
現在5巻まで刊行されており、佳境に迫っている。
早く結末を見せてほしいところ。
多分、みんな不幸になるんだろうなと思う。


気になるところをあげるなら、5巻辺りでは主人公が置いてきぼりになり、空気になっている印象。
もう少し、主人公にも光を当てて上げてほしい。
だいぶ存在感が薄いのだが、最も読者が共感できるのは主人公なので狙ってやっているのかもしれない。

 

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住みにごりの作品情報

■著者:たかたけし
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