映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

小説『エヴェレスト 神々の山嶺』ネタバレなしの感想。世界最高峰の山に魅せられた二人の男が出会う

■評価:★★★★☆4

 

「なぜ山に登るのか。そこにそれがあるからだ。」

【小説】エヴェレスト 神々の山嶺のレビュー、批評、評価

 

キマイラ・吼シリーズ』『サイコダイバー・シリーズ』『大帝の剣シリーズ』『餓狼伝シリーズ』『陰陽師シリーズ』の夢枕獏による1997年8月5日刊行の登山小説。

 

【あらすじ】山岳カメラマンの深町は、カトマンドゥの骨董屋で、エヴェレストで消息を絶った登山家のカメラを見つける。しかし天才クライマーの羽生と思しき男がそれを持ち去ってしまう。深町は帰国後、羽生について調べ始める。

 

本作を知ったきっかけは人気アニメ『メイドインアビス』の原作漫画家を手掛けるつくしあきひとが、本作のコミカライズである『神々の山嶺』を勧めていたため。

メイドインアビス』は様々な異物が眠る巨大な縦穴『アビス』を探窟する少女を主人公とする冒険ストーリー。
アビスの呪いという困難に立ち向かい、体がボロボロになりながら探検を進める主人公が痛々しい。
魅力的な敵やアビスという唯一無二の世界観が素晴らしくて最高の物語で、私は大ファン。
そんな『メイドインアビス』の作者が、とあるYouTubeの動画に出演しており、宮崎駿の漫画作品等と併せて影響を受けたと公言していた。

また他にも、『メタルギアソリッドシリーズ』『デス・ストランディング』のゲームデザイナー小島秀夫が自身を形作ったエンタメを紹介する自著『創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち』で、今回、私が読了した小説版の『エヴェレスト』を紹介している。

作家性豊かな二人が紹介するのだから、間違いなく面白いと核心があり、文庫本1000ページを超える大ボリュームのレンガ本を手に取った。

冒頭から最高に面白かった。
1920年代、エヴェレストに登ったジョージ・マロニーという登山家がいる。(実在の人物)
一流の登山家で当時は誰もが未登攀だったエヴェレストに、相棒のアンドリュー・アーヴィンと共に挑戦する。
結果、マロニーは戻ってこなかった。
当時、マロニーが頂上付近にいた姿の目撃情報が、彼を捉えた最後であり、登攀できたのかは未だに不明。
その後1950年代にイギリスの登山チームが登攀し、記録上では初登攀とされている。

そんな消えたマロニーが持っていたカメラを、主人公の深町がエヴェレストのあるネパールの古道具屋で見つけたところから物語が始まる。(このエピソードはフィクション)
中にフィルムは入っていなかったのだが、もし見つけ、マロニーが登頂していた記録があれば、登山史が変わる事件となる。
深澤はフィルム探しのためカメラを持ち込んだ人間を捜索するところから物語は始まる。

冒頭から謎解き要素がたまらない。
一体、誰が持ち込んだのか。
そもそもフィルムは本当に存在するのか。
あれば、どんな景色が収まっているのか。
ありとあらゆる妄想が湧き、堪能しながら、平易な読みやすい文章を最速で読み進めていく。

キャラクターも魅力的。
物語が進むと、羽生という1人の才能ある登山家にぶち当たる。
山に取り憑かれた彼は山にしか目がない。
私は山には詳しくないのだが、難しい登山をする場合、ザイルパートナーという相方と共に登るそう。
だが、コミュニケーションの下手な羽生は1人にこだわる。
仲間の前でも「もしパートナーと登ったとして、相方が滑って宙ぶらりんになったら、迷いなく自分と繋がれているザイル(ロープ)を切る」と断言する。
パートナーを見殺しにしてでも、生きて登頂を目指す冷酷な人間が羽生。

主人公は羽生に興味を持ち、調べ始めると羽生の壮絶な境遇が判明する。
これまで持っていた羽生とはまるで異なる印象を持つようになる。
潜った修羅場があまりに辛く、誰もが羽生に感情移入するだろう。

そしていよいよ、眼の前に立ちはだかる神々が住む山エヴェレスト。
もうページを止めるヒマなんてない。
むさぼり狂うように読み続けた。

内面描写も素晴らしかった。
とにかくエヴェレストは酸素が薄く、簡単に高山病になる。
高山病の症状である幻覚に苦しめられる描写が生々しくて嫌になる。
読んでいるこっちまで気が狂いそうになるし、実際に頭痛で読むのがしんどくなったときもあった。

一体、なぜここまで苦しんでまで、エヴェレストに登るのか。
羽生の山に対する想いを、深町が解釈した箇所が切なかった。
ネタバレになるので伏せておくが、羽生が山を登らざるをえない理由を知ったとき、毛嫌いしていた羽生が一気に好きになったし、応援したくなる。

見所だらけで最高の1冊だった。
山登りのシーンが思ったより少ないのと、若干、本筋とズレているシーンがあり、冗長と思える箇所もあった。
でもそんなの忘れるくらいに魅力的な物語。

登山とはまるで無縁の私でも楽しめたし、魅力的な男を目撃したい人にはぜひ、おすすめしたい。

 

 

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エヴェレスト 神々の山嶺の作品情報

■著者:夢枕獏
Wikipediaエヴェレスト 神々の山嶺
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