映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『BLUE GIANT』ネタバレなしの感想。世界一のジャズプレイヤーを志す男の物語

■評価:★★★★☆4

 

「ジャズは感情を剥き出しに出来る」

【映画】BLUE GIANTのレビュー、批評、評価

 

青年漫画雑誌『ビッグコミック』で連載中の石塚真一によるジャズを題材とした同名タイトルの漫画を原作とする。
2023年2月17日公開のアニメ映画。

 

【あらすじ】ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大(ミヤモトダイ)。雨の日も風の日も、毎日たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けてきた。卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二(タマダシュンジ)のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈(サワベユキノリ)と出会う。大は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組むことに。そこへ大の熱さに感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は“JASS”を結成する。(公式サイト引用)

 

公開当時、本作は映画好きのYouTuberやTwitterユーザーから、絶大な支持を受けていた。
本作の公開の少し前には『FIRST SLAM DUNK』も話題になっていたので、映画アニメ界隈は大いに盛り上がっていた印象。

本作は原作漫画も根強い人気を誇っていた。
漫画好きで有名なお笑い芸人の麒麟の川島が『アメトーーク』や『マンガ沼』といったバラエティテレビ番組で熱く語っていたので、私も存在自体は認知していた。

原作は30冊近く刊行されており、今も尚、連載中。
手を出すのが億劫な量なのだが、今回、2時間で鑑賞出来るアニメ映画になったので、とっつき易さから鑑賞に至った。

仙台出身で、プロのジャズサックスプレイヤーになるため、上京してきた18才の男・宮本大の話。

大は屈強な体格に、スポーツ刈りって感じの短い髪。
普段着は白Tシャツに青デニム。
いかにもフィジカルもメンタルが強そうな主人公感満載の男。
名前も大というシンプルな主人公設定は非常に感情移入しやすくなっている。

本編の時間軸は、過去の回想となっている。
本編が描かれる途中、随所に、既にプロとなり偉大なサックスプレイヤーとなった大と、かつて交流があった人物のインタビューが挿入される。
三者がいかに大が凄かったかを語るのだ。

特に印象的だったのが、本編よりも更に過去の大の仙台時代を知るオジサンのインタビュー。
仙台は東北なので、関東圏と比べるととても寒い。
でも大は、底冷えする日でも欠かさず、川辺でサックスを練習していると姿を見て、こいつは狂ってる、と、思った。と語っていた。

本当にその通りだと思う。
オリンピックで金メダルを取る人や、小説家でとんでもないベストセラーを叩き出す人など。
桁外れの成果を上げる人間は、普通の人間の理解の範疇を超えた努力をするもの。
私も小説を書く身なので、刺さるものがあった。

本編でも、大はとにかく魅力的に描かれる。
東京に住む同郷の友達に連絡なしに飛び込んでしばらく世話になる。
普通ならウザいと思って断るだろう。
だが、大の屈託のない笑顔やジャズを一途に愛する純粋さに友人は押し負ける。

ライブでは上手いピアニストを見つけたら、躊躇いもせずに「一緒にバンドやろう」と誘ったり。
また、サックスは3年程度とプレイ期間は決して長くない。
むしろプロになるには圧倒的に練習時間が足りてない。
にも関わらず、人に聞かせる時には体全身を使って、自信満々に演奏する。

彼のキャラクター性は誰もが憧れるヒーローそのものであり、観ていて惚れ惚れする。
彼には次々と協力者が現れるが、彼に惹かれる理由は納得である。

また大はサックスやジャズの良さを他の音楽と比べて「感情むき出しなのが良い」と嬉しそうに語る。
私はハッとさせられた。

私は最近、次の新人賞に向けて作った渾身のあらすじを先生に見せたところ、根底から作り直しを指示されるボツを食らった。
現在、修正作業には取り掛かっているのだが、心が折れかかり、今後の身の振り方について考えていた。

だが、小説の執筆も同じ。
私も感情を吐き出す心地よさから小説を描いている。
感情以外にも価値観や自分の考えを自分の中の面白いにして原稿に吐き出す。
だからこそ、上手く書けて、読んでくれた先生に褒められると無茶苦茶嬉しい。
自分の存在自体を肯定されたような感覚に溺れる。
だから、死ぬまで小説を描き続けるんだろうなと思う。
どうせ書くなら、今まで以上に本気で書こうと思わされた印象的な大のセリフだった。

あと、書くまでもないがライブシーンは最高だった。
ライブになると通常のアニメからモーションキャプチャーを取り入れた滑らかなCGアニメになったり、言葉で表現するのも難しい、独特の演出が凄い。
体全体で演奏する大やメンバーたちのプレイを迫力たっぷりに見せてくれる。
もはや文字で表現出来るレベルの映像ではない。

一つだけ気になるのは、終盤の唐突感の強いとある展開。
何の伏線もないので軽率過ぎて一気に物語から現実に引き戻された。
原作はどうなっているのか知らないが、観客を舐めているように見えるので止めて欲しい。

だが、全体的には好みだった。
シンプルなシナリオだし、出てくるキャラクターはみんな魅力的なので、1人でも多くの人に勧めたい。
熱いストーリーなので男性向けではあるが、女性でも楽しめること間違いなし。
元気が欲しい時、やるべきことを見失った時にもう一度鑑賞したい。

 


観客に元気を与えるエネルギッシュな作品のおすすめはコチラ。

ONE PIECENETFLIX実写版)

movies-ocean.hatenadiary.com

チェンソーマン

movies-ocean.hatenadiary.com

 

BLUE GIANTの作品情報

■監督:立川譲
■出演者:山田裕貴
間宮祥太朗
岡山天音
WikipediaBLUE GIANT(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):100%
AUDIENCE SCORE(観客):100%

 

BLUE GIANTを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(有料)○(Blu-ray)、原作漫画はコチラ
Netflix:-
※2023年11月現在