映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『ボイリング・ポイント/沸騰』ネタバレなしの感想。高級レストランのクリスマスのドタバタを描く

■評価:★★☆☆☆2

 

「高級レストランのクリスマスは大変」抜粋へ



【h2】【映画】ボイリング・ポイント/沸騰のレビュー、批評、評価

 

イギリス制作の2022年7月15日公開のドラマ映画。

 

【あらすじ】一年で最も賑わうクリスマス前の金曜日、ロンドンの人気高級レストラン。その日、オーナーシェフのアンディは妻子と別居し疲れきっていた。運悪く衛生管理検査があり評価を下げられ、次々とトラブルに見舞われるアンディ。気を取り直して開店するが、予約過多でスタッフたちは一触即発状態。そんな中、アンディのライバルシェフ・アリステアが有名なグルメ評論家サラを連れてサプライズ来店する。さらに、脅迫まがいの取引を持ちかけてきて…。もはや心身の限界点を超えつつあるアンディは、この波乱に満ちた一日を切り抜けられるのか……。(公式HP引用)

 


定期的にチェックしている映画批評YouTuberがオススメしていたので鑑賞に至った。

本作は上映時間95分をすべてワンカットで撮影している映画となっている。

一昔前と比べると最近、ワンカットや長回し映画が多い印象がある。
ワンカット映画は本当にワンカットで撮影されているケースは少なく、つなぎ目をCG処理等の技術を駆使し、疑似的にワンカットに仕上げているケースがほとんど。
CGの技術が上がったため、増えているのだと思われる。
※本作は疑似ではなく、純粋なワンカットだそう。だからこその弊害も後で記載する。

特に有名なのは、2020年2月14日に公開されたサム・メンデス監督の『1917 命をかけた伝令』。
第一次世界大戦下で、若い兵士2人が最前線に向け、作戦中止の伝令を届けるシンプルなストーリー。
アメリカン・ビューティー』などを手掛けたサム・メンデス監督特有の美しい映像にうっとりさせられる好きな映画である。

だが、個人的にはワンカット映画は好みではない。
観客視点のワンカットのメリットは、圧倒的な臨場感がある。
『1917 命をかけた伝令』はワンカットに向いていて、主人公の兵士が戦場を駆け抜けるシーンのワンカットの迫力はとんでもない。
URLを貼り付けて置くのでぜひ体感してもらいたい。
劇中で走る主人公が、対角線上を走る兵士とぶつかって倒れるシーンがあるが、演技ではなくリアルだそう。

youtu.be

話を戻すが、デメリットはドラマ性のなさ。
上映時間分しか経過時間がないので、通常のカットのある作品と比べると著しくドラマ性が落ちる。
ドラマ性の強弱は、時間経過が関わる。
例えば、色々とあって離れ離れとなった家族の再会時期が次の日か、あるいは十年後かでは、得られる感情の揺れは大きな差異がある。
人の想いは時間経過によって熟成される。
私がワンカットを好まない一番の理由がここにある。

本作に関しては、ドラマ性は薄いのだが、ワンカットによる弊害を大きく感じた。

本作は人気レストランのクリスマスの1日を描いている。
レストランは営業時間になると一瞬で満席になるのだが、第1に全然、料理してる感がない。

恐らく50席近くはあると思われる規模。
にも関わらず、全然フライパンを動かしていない。

高級レストランはフライパンを使わないものなのだろうか。
にしても、やけにコックたちはのんびりしているのが気になる。
ワンカットにこだわったせいで、調理描写が甘くなった印象。
カットが使えるのなら、画角等の見せ方で、料理人じゃなくてもスタイリッシュに見せる方法はある。
だが、カットが使えない縛りのせいで、調理シーンが甘く、迫力に欠ける結果となった。

あと、満席かつ営業時間中なのに、客に聞こえるような場所で全員でミーティングを始めるのも意味が分からない。
の割に誰かが大きめの声を出すと「お客様に聞こえるだろ」と注意する。意味が良く分からない。

あと、主人公のコックが何かにぶつかって痛そうにしてると、オーナーの女が「何?今の音。うるさい!」とガチキレするのも意味不明。
満席の客よりもいちいち、どうでもいいことでキレ合うことにエネルギーを使う登場人物を見てると、いかにもご都合主義に見えて冷める。

あと、影響力のある評論家が突然、来店するんだが、主人公は狼狽するわ、部下の前で言い訳するわで酷い醜態。
主人公は店のオーナーの1人なので、スタッフの前では毅然としてろよ、と思う。

ストーリーもキャラクターも何かもが酷い出来栄え。
本当にワンカット演出は、能力がある人間じゃないと手を付けない方が良いと思う。

 


ワンシチュエーションなのに見所だらけのおすすめ作品はコチラ。

■三茶のポルターガイスト

movies-ocean.hatenadiary.com

■アンフレンデッド

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ボイリング・ポイント/沸騰の作品情報

■監督:フィリップ・バランティー
■出演者:スティーヴン・グレアム
ヴィネット・ロビンソン
アリス・フィーザム
Wikipediaボイリング・ポイント/沸騰
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):99%
AUDIENCE SCORE(観客):85%

 

ボイリング・ポイント/沸騰を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)○(Blu-ray)
Netflix:-
※2023年11月現在