映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『わたしは最悪。』ネタバレなしの感想。何者にもなれないアラサーの女性の葛藤を描く

■評価:★★★☆☆3

 

「アラサー女性の葛藤」



【映画】わたしは最悪。のレビュー、批評、評価

 

『母の残像』『テルマ』のヨアキム・トリアー監督による2022年7月1日公開のドラマ映画。

 

【あらすじ】学生時代は成績優秀で、アート系の才能や文才もあるのに、「これしかない!」という決定的な道が見つからず、いまだ人生の脇役のような気分のユリヤ。そんな彼女にグラフィックノベル作家として成功した年上の恋人アクセルは、妻や母といったポジションをすすめてくる。ある夜、招待されていないパーティに紛れ込んだユリヤは、若くて魅力的なアイヴィンに出会う。新たな恋の勢いに乗って、ユリヤは今度こそ自分の人生の主役の座をつかもうとするのだが──。

 

本作はノルウェー映画となる。
ノルウェー映画で記憶にあるのは『ウトヤ島、7月22日』。
2011年の7月22日に実際に起きたノルウェー連続テロ事件を描いた史実の映画となる。
公開当時は大きな話題になっていたので、意気揚々と鑑賞した。
だが、中身は酷いものだった。
具体的に何が酷いのかは忘れてしまったが、テロの恐怖などは全然伝わってこず、映画としてのクオリティが壊滅的に酷かった。
私、個人の意見だが、鑑賞した年のワースト1位に挙げたくらい。

とはいえ、津波の恐さを描いた『THE WAVE ザ・ウェイブ』など、面白い映画もあったので、ノルウェー映画は今後も良作はどんどん日本で公開されそうな印象である。

話を戻すが、『わたしは最悪。』は定期的にチェックしている映画評論系ユーチューバーがおすすめに挙げていたので鑑賞に至った。

将来の夢がない、自分が何者なのかわからない主人公の葛藤を描いた青春ドラマ。
この手の設定だと、ストーリーの方向性がいくつか別れる。

例えば、旅に出る。
私が個人的に好きな『百万円と苦虫女』という蒼井優主演邦画がある。
いろいろあって前科がついてしまい地元に居づらくなった20代前半の女子が、100万円溜めて自分探しの旅に出る。
道中では、地元にいては経験できなかった様々な出会いやトラブルなどに巻き込まる物語。

あるいは、『ソラニン』のような、何をしたいか分からないままグダグダしているけど、大きなトラブルに見舞われ、強制的に自立を迫られるタイプのストーリーもある。

私は自分と向き合って苦しんでもがいて成長していく青春ドラマは好きなので、本作は期待を持って鑑賞に至った。

キャラクターのディティールの描き方が素晴らしかった。
主人公のユリアは、恋人と上手くいっていない時にアイヴィンというイケメンと出会う。
このとき、お互いには恋人がいる。
でも、どこか相性が良く、会話も弾む。
二人とも真面目なので、浮気はしないように心がける。
パーティ会場といった雰囲気もあり、「どこまでは浮気じゃないかゲーム」を始めるのだ。

例えば、煙草の煙を吐いて、相手が吸うのは浮気じゃない、とか。
直接的な肉体的接触を避けるも、ぎりぎりまで距離を縮める遊びをする。
見ているこちらも寸止め感にドキドキさせられる。
このシーンはものすごく惹かれた。
監督の作家性が感じれる繊細な見せ方だった。

印象的だったのは、ユリアは自分の子供っぽさというか、結婚であったり子供を作ったりと、大人になることを避けていることを自覚している。
また、自分は新しいもの好きで、すぐに飽きては新しいものが欲しくなる性格を熟知している。
実は彼女は大人なんだろうなって思った。
本当に精神年齢の低い人間は、そんなに自分を客観視できないし、ただただ欲望のままに突っ切る生き物だろうから。

と考えたとき、結末のユリアが得た成長による行動結果はいたって普通だった。
もう少し面白味があっても良かったように思える。
想定内の結末にするなら、過去の名作を鑑賞すれば良いのだから。

魅力的な箇所はありつつも、鑑賞後感としては普通の作品だった。

 


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■ぼっち・ざ・ろっく!

movies-ocean.hatenadiary.com

 

わたしは最悪。の作品情報

■監督:ヨアキム・トリアー
■出演者:レナーテ・レインスヴェ
アンデルシュ・ダニエルセン・リー
ハーバート・ノードラム
Wikipediaわたしは最悪。
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):96%
AUDIENCE SCORE(観客):86%

 

わたしは最悪。を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)○(Blu-ray)
Netflix:-
※2023年6月現在