映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『アテナ』ネタバレなしの感想。パリの郊外を舞台とした弟と失った男の復讐劇を描く

■評価:★★☆☆☆2.5 

 

「兄弟」



【映画】アテナのレビュー、批評、評価

 

ひとりの少年が命を奪われた悲しい事件をきっかけに、激しい戦いの舞台と化したアテナ団地。その争いの渦中には、被害者である少年の兄たちがいた。


Netflix制作によるオリジナル脚本の映画作品。
配信当初は、SNSや著名人のレビューでちょっとした話題となっていたので鑑賞した。

言及されていたのが冒頭11分のワンカットで流れるシーン。
特にカーチェイスの箇所は、縦横無尽に視点を切り替えてのカメラアングルが素晴らしいといった内容。

実際に鑑賞したら、確かにワンカットシーンは見応えが抜群だった。
一度もシーンが切り替わることなく、主人公らが潜入先で金庫を盗み、根城であるアテナ団地に帰還するまでを11分で描ききっている。
恐らく擬似的にワンカットになるように編集をしているんだと思う。
でも、まったく編集ポイントは分からないし、息を吞む展開で画面に食い入るように見入ってしまった。

ただ、あくまで個人的にだが、このシーンよりも驚かされたのが、舞台が現代のフランスの首都パリの郊外だということ。
パリといえば花の都といった二つ名を持つくらいにお洒落で、ハイセンスな人が集まる街の印象が強い。
華やかのイメージしかないパリだが、実際は、一部に過ぎない。
実際には、郊外にスラム街があり、治安はよろしくない。
ファッション好きからすればパリは高尚なイメージがあるが、そんな印象をぶっ壊すような現実を目の当たりにさせられた。

日本には今も尚、「サムライや忍者がいる」と思い込んでいる外国人と似たような感覚だろう。

で、肝心の映画のストーリーについてだが、大した内容ではなかった。
本作は、わずか1日の出来事を、2時間の上映時間で描いている。
そのため、随所にワンカットによるロングカットのシーンが挿入されている。

たった1日しか描かれないので、ドラマ性が皆無なのが残念だった。
時間にドラマが宿る、と私は思っている。
あくまで私の意見ではあるが、賛同者は多いと思う。
人間の成長や変化には、時間は必要である。
だってそうだろう。
ローマは一日にして成らずなんて言葉があるくらい、何かを完成させたり、あるいは努力をして成果を達成するには時間がかかるもの。
逆に言えば、大して時間の掛からないものは相応の価値のものしか出来ない。(もちろん場合にもよる)

そのため、時間の経過が少ない物語は、ドラマ性が希薄になりがち。
本作も例外なく、キャラの成長や変化はほとんど見られない。
そのせいでどのキャラにも感情移入もできない。
鑑賞して1週間ほど経過して今この記事を書いているが、どのキャラも印象は皆無である。

ただ、主人公の俳優は、印象に残る顔立ちをしていた。
特に目が印象的で、日本でいうなら柳楽優弥を思わせる存在感だった。

本作は、テーマは嫌いじゃなかった。
監督のインタビューによると「兄弟が袂を分かち合う悲劇」を主題として本作の脚本を執筆したそう。
共感もしやすいし、ドラマ性も孕みやすい素晴らしい内容。
だからこそ、長い時間の経過を伴う作品として制作したほうが良かった。

例えば、兄弟をテーマとしたは『犬猿』という邦画があるがバチクソ面白い。
本作とは重厚な作風とは異なり、コメディ要素の強い映画だが、兄弟間、姉妹間ならではの哀愁や苦悩、怒りが描かれる。
共感できる部分だったりといった面白いエピソードのてんこ盛りで、大好きな作品。

対して、『アテナ』は見応えに乏しい内容で、あまり人には勧められない内容だった。

 


家族を題材とした作品のおすすめはコチラ。

■罪の声

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サイバーパンク: エッジランナーズ

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アテナの作品情報

■監督:ロマン・ガブラス
■出演者:ダリ・ベンサーラ
サミ・スリマンサミ・スリマン
アントニー・バジョンアントニー・バジョン
オウアシニ・エンバレクオウアシニ・エンバレク
Wikipediaアテナ(英語版)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):85%
AUDIENCE SCORE(観客):69%

アテナを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
Netflix○(見放題)
※2023年2月現在