映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『シー・セッド その名を暴け』ネタバレなしの感想。映画プロデューサーの性的暴行を告発した二人の女性記者を描く

■評価:★★★☆☆3

 

「社会的弱者が立ち上がる勇気の素晴らしさ」

【映画】シー・セッド その名を暴けのレビュー、批評、評価

 

#Me too運動が生まれたきっかけとなる出来事を扱った2023年1月13日公開のアメリカ制作の社会派ドラマ映画。

 

【あらすじ】ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、大物映画プロデューサーのワインスタインが数十年にわたって続けてきた性的暴行について取材を始めるが、ワインスタインがこれまで何度も記事をもみ消してきたことを知る。被害女性の多くは示談に応じており、証言すれば訴えられるという恐怖や当時のトラウマによって声を上げられずにいた。問題の本質が業界の隠蔽体質にあると気づいた記者たちは、取材対象から拒否され、ワインスタイン側からの妨害を受けながらも、真実を追い求めて奔走する。(映画.com引用)

 


#Me too運動は主に女性の性加害をSNSで告白する際に使われたハッシュタグで、「私も被害者」という意味で生まれた経緯がある。

X(Twitter)やYouTubeといったSNSが成熟した現代だからこそ、生まれた運動。
社会的に立場の弱い人間にとって、SNSは銃よりも強い武器となる。
ペンは剣よりも強し、なんて言葉の現代版である。

元々この運動は、本作で描かれるハリウッド界隈から始まり、宮崎駿のお友達で『トイ・ストーリー』の監督及び、『アナと雪の女王』や『ズートピア』『ベイマックス』で低迷していたディズニー映画を復活させ、ディズニーの黄金期を引き起こした元ディズニー映画のプロデューサー、ジョン・ラセター
『セブン』『アメリカンビューティー』の俳優のケヴィン・スペイシー、同じく『セブン』のモーガン・フリーマンなど、多くのハリウッド著名人が、#Me too運動の影響によって告発され、活動休止となった。

日本でも映画監督の園子温や俳優の木下ほうかが、女優からの性加害を、告発された。
ジャニー喜多川松本人志の性加害も影響下にあると思われる。

日本の芸能界が良くも悪くも浄化されるきっかけとなった出来事の実話なので、非常に強い興味を持って鑑賞に至った。
(良くも悪くもの表現は、松本人志など、まだ真偽があやふやな状態で社会的に裁かれる人物もおり、違和感があるため)

本作は、スピード感が良い。
開始十分程度から、新聞記者の主人公の耳に、大物ハリウッド映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性加害疑惑の情報が入ってくる。

早速、記事にするために、当時の被害者に当たっていく。
だが、みんな一向に口を割ろうとしない。
例えば、示談で被害者に守秘義務が発生したりと、加害者側が守られる仕組みになっているので、思うように取材の首尾が捗らない。

私としては裁判周りの知識はなかったので、興味深く観ることができた。
ただ中盤以降、テンポが非常に悪くなる。

主人公はもちろん諦めることなく、核心的な証言、証拠を得るために、他の被害者に当たり続ける。
鼻から拒絶する人いれば、「あなたが来るのをずっと待ってた」と、受け入れ態勢の被害者がようやく現れたと思ったら「やっぱり話せないわ」と、告発を拒否される。

同じような展開が終盤までずっと続くので、物語としては中弛みを感じる。
ただ告発拒否だけではない様々なドラマを期待していたが、思ったより、一辺倒な展開なので、かなり眠気に襲われる。
史実の映画の悪い部分が出ている印象。
特に今回は性にまつわるセンシティブな出来事なので、事実を忠実に再現しようと、脚色を入れられなかったことが、このような脚本となった原因に思われる。

さすがにクライマックスではカタルシスを与えてくれる。
主人公の記者の苦労が報われる瞬間は、観客も最高の心地良さに包まれる。

日本では、週刊文春やフライデーなどの週刊誌は、時折、私人逮捕系ユーチューバーのような、金だけが目的で人の人生を壊す記事を書く。

例えば、雨上がり決死隊の宮迫の闇営業問題など。
未だに宮迫が週刊誌が示したような悪なのかは、首を傾げたくなる。
影響力のあるメディアはおごらず、本作の勇敢な記者たちのように有効な力の使い方をして欲しい。

話を戻すが、歴史的な事件の全容を映画で分かりやすく知れたのは良かった。
エンタメ的な面白さは皆無なので、知識欲が旺盛な人だったり社会派の作品に関心がある人のみおすすめしたい。

 

 

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シー・セッド その名を暴けの作品情報

■監督:マリア・シュラーダー
■出演者:キャリー・マリガン
ゾーイ・カザン
Wikipediaシー・セッド その名を暴け(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):88%
AUDIENCE SCORE(観客):91%

 

シー・セッド その名を暴けを見れる配信サイト

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Netflix:-
※2024年3月現在