■評価:★★★☆☆3
「集団ヒステリー」
【映画】偽りなき者のレビュー、批評、評価
海外ドラマの『ハンニバル』でハンニバル・レクターを演じたマッツ・ミケルセン主演の2013年公開のドラマ映画
ルーカスは学校教師だったが、妻との離婚を経て今は息子のマルクスとの関係を保ちながら、幼稚園の教師を続けていた。彼の友人テオの娘であるクララはルーカスを好いていたが、贈り物をしようとしても彼が頑として受け取らないのに腹を立て、幼稚園の園長に彼が性的虐待をしたかのような告げ口をする。クララにとってはちょっとした悪戯でしかなかったが、閉鎖的な田舎町でこの発言は大きな波紋を広げ、ルーカスは許されない変質者の烙印を押される。
デンマークの宝石、と称しても過言ではないイケオジ俳優マッツ・ミケルセンの代表作の1本。
他の彼の代表作といったら、テレビシリーズ『ハンニバル』(2013年 - 2015年)のハンニバル・レクター役。
ドラマや映画ではないが、小島秀夫監督のビデオゲーム『デス・ストランディング』でもメイン・キャラクターの一人を演じている。
本作は彼の出身国であるデンマーク映画となる。
デンマーク映画なんて、映画ファンでないとまず見る機会はないだろう。
そもそも私を含む、日本人の多くは「デンマークってどんな国?」といった感じで、デンマーク自体に馴染みは薄そうである。
さらっと調べたところ、北ヨーロッパの位置する海に面した国でドイツと隣接している。
一応、北欧に分類されるとのこと。
福祉に力が入っている国で、市民の生活満足度は世界最高クラス。
2014年の国連世界幸福度報告では幸福度第1位とのこと。
そんな魅力的な国によって作られた本作。
確かに映像は、北欧らしい寒々しさがあった。
閉鎖的な田舎町を舞台とする。
子供が大好きで、園児から人気者の幼稚園教師の男ルーカスが、生徒の女児から「男性器を見せられた」といった、ちょっと嘘により町民から迫害を受ける話。
田舎町なせいか、町民間による情報の伝達速度は異様に早い。
一瞬にして、ルーカスはすべての町民から「変態」扱いをされる。
当然、勤務していた幼稚園は解雇。
スーパーに行っても「お前に売るものはない」と追い出される。
家で料理をしていたら、突然、石を投げられて、ガラスが割られる。
まるで天国から地獄である。
話は少し逸れるが、私はまだ未読だが、『サピエンス全史』というベストセラー本がある。
人類(ホモ・サピエンス)がどういった経緯で食物連鎖の頂点に君臨したのか。
また、どのようにして文明を築いたのかを歴史的に解明する内容。
この本では、ホモ・サピエンスが生き残った理由の1つに、疫病に耐え抜いたからでもなく、争いに打ち勝ったのでもなく、「陰口と噂話」をする能力によるもの、との言及があるとのこと。
非常に興味深い話である。
陰口と噂話により、集団の中から悪人を追放したりする。
そうやって集団を守り抜いてきたのがホモ・サピエンスだそう。
そのため、人類は食事や睡眠よりも、SNSに没頭してもおかしくない本能を持っている。
本作こそ、まさに「陰口と噂話」による迫害である。
違和感を覚えたのが、誰もルーカスの言い分を聞かないところ。
映画ではあるあるだが、かたくなにルーカスの言葉を右から左なのは、脚本としてどうなんだろう。
もう少し話を聞いてあげてほしい。
できることなら、話を聞いた上でも、町民たちに誤解されてしまうほどに、幾十にも「男がやった」と思わせる方向に脚本を作って欲しかった。
あと一番、引っかかりを覚えた箇所は、中盤辺りでルーカスが警察に逮捕される流れ。
証拠もないのに逮捕っておかしくないだろうか?
本作は北欧の馴染みのない国が舞台だが、ストーリー自体は日本で発生してもおかしくないので違和感なく見られる。
だが、ストーリーの展開が雑すぎる印象だった。
さらに、クライマックスも、個人的にはいただけない。
私としては、ハッピーエンドかバッドエンドの観点で言うなら、逆の展開のが自然だと思う。
■閉塞的な田舎が舞台の関連作品はこちら
偽りなき者の作品情報
■監督:トマス・ヴィンターベア
■出演者:マッツ・ミケルセン
■Wikipedia:偽りなき者(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):92%
AUDIENCE SCORE(観客):93%
偽りなき者を見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(DVD)
Netflix:-
※2022年9月現在