■評価:★★★☆☆3.5
「人生には重大な決断を迫られる時が来る」
【映画】BAD LANDS バッド・ランズのレビュー、批評、評価
『突入せよ! あさま山荘事件』『クライマーズ・ハイ』『駆込み女と駆出し男』『日本のいちばん長い日』の原田 眞人監督による2023年9月29日公開のクライムサスペンス映画。
【あらすじ】大阪で特殊詐欺集団の一員として受け子の差配をするネリ。ある日、出所したばかりの弟ジョーがヤクザ相手にトラブルを起こし、彼女も巻き込まれてしまう。
公開当時、X(Twitter)でそこそこ評判が良かった印象があり、今回、Netflixで配信されていたので鑑賞に至った。
主演は安藤サクラ。
私が、初めて彼女を認識したのは2014年公開の『百円の恋』。
実家に寄生するふくよかな体型のダメ女子が、色々あって実家から追い出され、その後に知り合った男の影響でボクシングを始める話。
物語が進むにつれて体型や顔つきが変化していく安藤サクラの俳優魂を感じさせる映画で無茶苦茶、面白かった。
その後も安藤サクラはカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』、バカリズム脚本のテレビドラマ『ブラッシュアップライフ』など多くの話題作に出演し、最近、彼女の飛躍っぷりはとんでもないイメージ。
2023年には『まつもtoなかい』といったバラエティにも出演していたので、すっかりスターである。
そんな彼女の主演作なので期待して鑑賞した。
ストーリーは、特殊詐欺グループで働く安藤サクラ扮するネリ。ある日、彼の義理の弟が暴力的な組織とトラブルを起こし、平和な暮らしが崩れていく。
ロケーションが最高だった。
大阪の新世界、西成辺りが舞台。
ネリが住むのはホームレスだったりと治安の悪そうなエリア。
まるで昭和のようなコテコテの大阪弁が飛び交っていて、東京に住む私からしたら、まるで非日常。
大阪らしく、ボケやツッコミのあるユーモアな会話もテンポ良く炸裂しており、もはや連中の会話を観ているだけでも楽しい。
そのため、本作は冒頭から心を掴まれた。
ネリらの聖域のような常連スポット、カフェバー「バッドランズ」の雰囲気も良い。
倉庫を改装しただだっ広い内装で、一階はビリヤード台が設置されていて、2階がカフェバーとなっている。
秘密基地感を感じされる少年心をくすぐられる最高のロケーション。
監督の魅力的な世界観作りには感嘆とさせられる。
特殊詐欺のやり方も演出が細かくて興奮した。
冒頭では電話で騙した老婆に金を降ろさせる。
次に金を受け取る段階になるのだが、ネリは一向に受け子に受け取りを指示しない。
老婆に長い距離を歩かせたり、あるいは電車に乗らせて駅を変えたり、やりすぎなほど慎重。
警察などに見張られていないか細心の注意を測っている。
原作が小説なので、取材してリアリティのある描写を実現させたのだと思われる。
見応えかあって良かった。
肝心のストーリーの本筋には突っ込みどころがある。
ネリに懐いている弟のジョーは明るい男だが、明らかにIQが低く、放っておくだけで危ないことをしでかしそう。
ネリは「私は取り返しのつかない犯罪だけはしたくない」と彼に遠回しに「私に迷惑をかけるなよ」と警鐘混じりの宣言する。
確かに特殊詐欺であれば、まだ逮捕されても人生のやり直しが利くレベル。
そんな彼女は中盤、大きな決断をする。
彼女は、過去に男で失敗している境遇も描かれるので、この決断に、観客は一気に彼女に感情移入する。
それは良いのだが、更に物語が進むと、どうやら彼女は過去にとっくに取り返しのつかない犯罪をしている事実が判明する。
そのせいで本作の一番の肝となるネリの決断が大した行動ではないと思えてしまい、心が離れてしまった。
キャラは漫画的で魅力なのはまだ救い。
特に印象的だったのは賭博場を指揮する金髪の女。
所作のすべてが異様で、一度観たら一生忘れられないほどのインパクト。
好きな箇所も多いが、もう少し突っ込みどころのないように脚本を練ってほしかった。
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■ハウス・オブ・グッチ
BAD LANDS バッド・ランズの作品情報
■監督:原田眞人
■出演者:安藤サクラ
山田涼介
生瀬勝久
■Wikipedia:原田眞人
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):97%
AUDIENCE SCORE(観客):90%
BAD LANDS バッド・ランズを見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
Netflix:○(見放題)
※2024年2月現在