映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『ザ・キラー』ネタバレなしの感想。任務の失敗で雇い主と戦うことになった暗殺者を描く

■評価:★★★☆☆3

 

「ネオ・ノワールの面白さ」

【映画】ザ・キラーのレビュー、批評、評価

 

エイリアン3』『セブン』『ゲーム』『ファイト・クラブ』『ゾディアック』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『ソーシャル・ネットワーク』『ドラゴン・タトゥーの女』『ゴーン・ガール』のデヴィッド・フィンチャー監督による2023年11月10日配信のNetflixオリジナルのスリラー映画。

 

【あらすじ】とあるニアミスによって運命が大きく転換し、岐路に立たされた暗殺者の男が、雇い主や自分自身にも抗いながら、世界を舞台に追跡劇を繰り広げる。(映画.com引用)

 

デヴィッド・フィンチャー監督といえば、完璧主義な作品作りの印象が強い。
例えば1つのシーンに百回以上、リテイクさせることもあるそう。(Wikipediaに載ってた)
俳優の負担が大きいので大変そう。

余談だが、逆に北野武はほとんどが一発撮りらしく、俳優陣のプレッシャーがえぐいらしい。
確かに「もし自分がしくじって空気感を壊したら」なんてネガティブな感情に襲われ、頭髪が抜けそう。

話を戻すが、拘りの強さも相まってか、フィンチャー作品は当たりが多い。
映像の雰囲気も素晴らしいので、強く気に入る作品もちらほらある。
特に私は『セブン』が好きである。
斜め上をいく挑発的な結末が有名だが、とにかく映像が印象的。
現代が舞台だが、雨が降り続ける都会の雰囲気がどこか退廃的で非現実的。
映銀残しという独特な手法を使っているらしく、普通の映画とは異なるコントラストの強い印象に残る映像になっている。
当時は、日本のテレビドラマ『ケイゾク』のオープニングがインスパイアを受けていたり、『セブン』が映像業界に与えた大きい。

本作も冒頭から、フィンチャーらしさが爆発している。
主人公はやり手の命奪い屋らしい。
毎日、ビルの一室で向かいのホテルの部屋の様子を伺っている。
所作が神経質で、毎日、一寸の狂いないルーティーンでターゲットを確認する。

また、同じ言葉を自分に言い聞かせる自己暗示も印象的だった。
「感情移入してはいけない」とか、自分なりのルールを何度も何度も繰り返し頭の中で唱えて、精神統一を図る。

この異様なまでの主人公の神経質っぷりが、フィンチャー作品の登場人物らしい。
フィンチャー映画には、突き抜けた特徴を持つキャラが良く登場する。
『セブン』であれば犯人だったり、『ソーシャルネットワーク』では主人公のマーク・ザッカーバーグ、『ゴーン・ガール』の主人公の女性もなかなかイカれていた。

容赦ないキャラ造形が魅力に溢れており、本作も冒頭から期待を持たせてくれる。

効果音を意図的に演出に組み込んでいたのも印象的。
主人公が最初に住処とするビルの部屋に入るときのドアの閉会音。

主人公が出入りするときに毎回、ピーピー音が鳴る。
では主人公が部屋にいるときに、突然、閉会音が鳴ったら。
といった具合に特徴的な効果音を観客の印象に残るように強調することで、後のフリとして活きてくる。

映画の作り方が巧み過ぎて笑える。
クオリティに対して圧倒的な安心感を与えてくれるさすがは巨匠。

公式サイトのあらすじに書かれているのでネタバレではないが、最初のターゲットは普通に命を奪うのにミスする。

例えば、銃を撃った瞬間に射線に鳥が飛んできて当たって、弾丸の軌道が変わって失敗、なら分かる。
だが、あんなに念入りにルーティーンを守ったのに、普通に失敗する。
フリが効きすぎて、まるでコントである。
「こいつ本当に凄腕なのか」とついつい心配になった。

このあとは、死線を楽々くぐり抜けることもあり、凄腕っぷりを見せてくれるので問題ないのだが、あまりに最初の任務でナチュラルにしくじったのは、緊張と緩和を狙った敢えてのことなのだろうか。
笑って良いのかシリアスに見るべきなのか、答えを教えて欲しいところ。(たぶん笑って良い)

シナリオ自体は思ったより普通だった。
失敗した命奪い屋のその後、という設定は若干新しさはあるが、想定外のシナリオが続くわけではない。

魅力的なキャラは多く登場するので、そこそこ楽しめる。
シナリオは凡庸なのでフィンチャー作品の中では下のほう。

 


良い緊張感が画面を釘付けにさせる良質スリラーの作品はコチラ。

■終わらない週末

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■ガンニバル

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■宇宙のランデヴー

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ザ・キラーの作品情報

■監督:デヴィッド・フィンチャー
■出演者:マイケル・ファスベンダー
チャールズ・パーネル
アーリス・ハワード
ティルダ・スウィントン
Wikipediaザ・キラー
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):86%
AUDIENCE SCORE(観客):60%

 

ザ・キラーを見れる配信サイト

U-NEXT:-
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Netflix○(見放題)
※2024年2月現在