映画のくれた時間

約1500本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます(たまにアニメ・ドラマ・小説も)。面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

映画『ケイコ 目を澄ませて』ネタバレなしの感想。耳が聞こえない女性プロボクサーの葛藤を描く

■評価:★★★☆☆3.5 

 

「失聴女性の葛藤」

【映画】ケイコ 目を澄ませてのレビュー、批評、評価


『Playback』『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督による2022年12月16日公開のドラマ映画。
プロボクサー小笠原恵子の自伝『負けないで!』を原案とする。


【あらすじ】2020年、東京。主人公の小河ケイコは、先天性の聴覚障害を持ちながらも、下町のボクシングジムに通うプロボクサーである。デビュー戦から第2戦まで勝利を収めるものの、母の喜代実からは「いつまで続ける気?」と問われる。ケイコ自身も、ボクシングを続けるかどうかの葛藤に悩まされている。ジムの休会を願う手紙を書いたものの、ジムの会長に出すこともできずにいる。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されると知り、次第に心が揺れ始める。

 


定期的にチェックしている映画評論系のyoutuberがおすすめとして挙げていたので鑑賞した。

聴覚障害のボクサーを題材とする設定は、非常に鮮度が高くオリジナリティを感じた。
今までは色んなボクサー映画や小説を観てきた。
天才高校生ボクサーを描いた百田尚樹著の『ボックス!』。
怠惰な生活を送る女性が恋したボクサーの男に影響されてボクシングを始める『百円の恋』。
まったくボクシングの才能のない男と、スター候補のボクサーの対比の男を描く『BLUE』。
北野武の名作青春映画『キッズ・リターン』もボクシングを題材にしているが、何故かボクサー映画は良作が多い。

恐らく、殴り合う競技という性質が人間同士が裸でぶつかり合っている感が強いのと、生死や網膜剥離などの重病などのリスクの高さが強いドラマ性を生むのだろうと、個人的に思っている。

そんな感じで本作は大きな期待を持って鑑賞することになった。

序盤から丁寧な猫写で、物語に入りこませてくれる。
ケイコは聴覚障害のため、日常生活で困ることが多い。
例えばボクシングジムでは、ケイコのトレーナーがホワイトボードでコミュニケーションを取ってくれたり。
コンビニでは店員の「ポイントカードを持ってますか」の質問が聞き取れずエコバッグを差し出し、店員に察さられたり。
街を歩いていると、音が聞こえないので人にぶつかり、言いがかりを受ける面倒臭い場面もある。
ケイコの日常生活の苦労が観客に伝わってくる。
「もし自分の立場だったらどうだろうか」と観客は考えさせられる。

また聴覚障害や女性ということもあって、母からは「いつまでボクシングを、やるの?」と、周りから理解を得られていないのは可哀想に感じる。
耳が不自由なケイコにとっては最もやりがいのある題材を。

こんな感じでケイコのキャラ性を丁寧に描いているので、すぐに感情移入させてくれる。

そんなケイコが通うジムが閉鎖となる。
ケイコはどんな決断を下すのか。

非情な選択を迫られるケイコが不憫で仕方がない。
最後が気になるので鑑賞したが、イメージよりもピンと来なかった。
何ていうか、想像通りの展開を迎えただけなので、感動は皆無だった。

公式サイトを調べたら、どうやらモデルとなる人物がいて、元ととなる原案の書籍も存在する。
だからこそ、大きな脚色を入れずにシンプルな展開で結末を迎えたのだろうか。

あとは、私が本作を観る前から期待しすぎていたのかもしれない。
本作はSNS受けするような内容なので、口コミを鵜呑みにしすぎた可能性も否めない。

とはいえ、悪い映画ではないので、興味がある人は鑑賞して良いと思う。
結末に向けて波乱が大きくなるわけではないので、期待し過ぎない事をおすすめする。

 

 

不憫な主人公が描かれるおすすめ作品はコチラ。

テルマ&ルイーズ

movies-ocean.hatenadiary.com


レッド・スパロー

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ケイコ 目を澄ませての作品情報

■監督:三宅唱
■出演者:岸井ゆきの
三浦誠己
松浦慎一郎
佐藤緋美
中原ナナ
足立智充
清水優
丈太郎
安光隆太郎
渡辺真起子
中村優子
中島ひろ子
仙道敦子
三浦友和
Wikipediaケイコ 目を澄ませて

 

ケイコ 目を澄ませてを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)、原案はコチラ
Netflix:-
※2023年8月現在